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東京地方裁判所 平成8年(行ウ)96号 判決 1999年5月19日

東京都千代田区岩本町三丁目四番五号

第一東ビル五〇二号室

原告

破産者ハニックス工業株式会社 破産管財人 表久雄

右常置代理人弁護士

豊田愛祥

古川晴雄

小田修司

二島豊太

渡辺潤

権田安則

東京都豊島区西池袋三丁目三三番二二号

被告

豊島税務署長 大平繼吉

右指定代理人

加藤裕

木上律子

光吉正博

杦田喜逸

佐藤宣弘

岡田繁樹

藤村豊

大川芳行

森秀寛

主文

一  被告が破産者ハニックス工業株式会社に対し平成五年六月一〇日付けでした、同社の昭和六三年一二月二一日から平成元年一二月二〇日までの事業年度の法人税の重加算税及び過少申告加算税の賦課決定(ただし、審査裁決により一部取り消された後のもの)のうち、税額一六万七〇〇〇円を超える部分を取り消す。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

一  被告が破産者ハニックス工業株式会社に対し平成四年四月二八日付けでした、同社の平成元年一二月二一日から平成二年一二月二〇日までの事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分を取り消す。

二  被告が破産者ハニックス工業株式会社に対し平成五年六月一〇日付けでした、同社の昭和六三年一月一日から同年一二月二〇日までの事業年度の法人税の更正処分のうち所得金額一六億四一二八万四五〇四円、税額六億八七七七万八三八〇円(ただし、法人税法六八条による所得税額控除前の税額)を超える部分及び重加算税の賦課決定を取り消す。

三  被告が破産者ハニックス工業株式会社に対し平成五年六月一〇日付けでした、同社の昭和六三年一二月二一日から平成元年一二月二〇日までの事業年度の法人税の更正処分(ただし、審査裁決により一部取り消された後のもの)のうち所得金額二三億三五一四万〇一六九円、税額九億八〇七五万八八〇〇円(ただし、法人税法六八条による所得税額控除前の税額)を超える部分並びに重加算税及び過少申告加算税の賦課決定(ただし、審査裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。

四  被告が破産者ハニックス工業株式会社に対し平成五年六月一〇日付けでした、同社の平成元年一二月二一日から平成二年一二月二〇日までの事業年度の法人税の更正処分のうち所得金額二五億八〇四七万五〇七八円、税額一〇億三二一九万円(ただし、法人税法六八条による所得税額控除前の税額)を超える部分並びに重加算税及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。

第二事案の概要

本件は、平成五年一二月二二日に破産宣告を受けたハニックス工業株式会社(平成二年三月二〇日付けの商号変更前の旧商号「ハンドーザー工業株式会社」。以下「破産会社」という。)の昭和六三年一月一日から同年一二月二〇日までの事業年度(以下「昭和六三年一二月期」という。)、同月二一日から平成元年一二月二〇日までの事業年度(以下「平成元年一二月期」という。)及び同月二一日から平成二年一二月二〇日までの事業年度(以下「平成二年一二月期」といい、昭和六三年一二月期及び平成元年一二月期と併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、破産会社が関連会社の株式の低額譲受けによる受贈益や自己株式の売却による有価証券売却益等を除外して申告していたとして、被告が破産会社に対し、平成二年一二月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分をするとともに、本件各事業年度の法人税の更正処分並びに重加算税及び過少申告加算税の賦課決定をしたところ、破産会社の破産管財人に選任された原告が、これらの処分を不服として、その取消しを求めている事案である(ただし、右各更正処分については各申告所得金額を超える部分の取消しを求めるものであり、平成元年一二月期に係る更正処分並びに重加算税及び過少申告加算税の賦課決定については、審査裁決により一部取り消された後のものの取消しを求めるものである。)。

一  前提となる事実

(以下の事実は、2の(二)(4)及び(三)(3)記載の事実を除き、当事者間に争いがない。)

1  当事者

破産会社は、平成五年一二月二二日、東京地方裁判所において破産宣告を受け(同庁平成五年(フ)第三七二三号事件)、原告が破産管財人に選任された。

2  課税処分等の経緯(別紙一ないし四参照)

(一) 確定申告

破産会社は、本件各事業年度の法人税について、青色の確定申告書により、次の(1)ないし(3)記載のとおり申告を行った。

(1) 昭和六三年一二月期(平成元年三月二〇日申告書提出)

ア 所得金額 一六億四一二八万四五〇四円

イ 納付すべき税額 六億七四七九万一八〇〇円

(2) 平成元年一二月期(平成二年三月二〇日申告書提出)

ア 所得金額 二三億三五一四万〇一六九円

イ 納付すべき税額 九億三五一九万一四〇〇円

(3) 平成二年一二月期(平成三年三月一九日申告書提出)

ア 所得金額 二五億八〇四七万五〇七八円

イ 納付すべき税額 八億八四〇七万七三〇〇円

(二) 青色申告承認取消処分

(1) 被告は、東京国税局の職員による調査に基づき、破産会社が平成二年一二月期に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載していたものと認め、平成四年四月二八日付けで、破産会社に対し、平成二年一二月期以後の法人税について青色申告の承認を取り消す旨の処分(以下「本件青色申告承認取消処分」という。)をした。

(2) 破産会社は、本件青色申告承認取消処分を不服として、平成四年六月二二日、東京国税局長に対し異議申立てを行ったが、同局長は、平成六年九月二一日付けで、右異議申立てを棄却する旨の決定をした。

(3) 原告は、右決定を経た後の本件青色申告承認取消処分をなお不服として、平成六年一〇月六日付けで、国税不服審判所長に対し審査請求を行った。

(4) 原告は、右審査請求をした日の翌日から起算して三か月を経過しても裁決がされなかったため、平成八年五月二七日、本件訴訟を提起したところ、その後、国税不服審判所長は、後記(三)(2)記載の審査請求と併合審理の上、平成九年一一月一七日付けで、本件青色申告承認取消処分に対する審査請求を棄却する旨の裁決をした(記録により明らかな事実)。

(三) 更正処分及び加算税の賦課決定

(1) 被告は、東京国税局の職員による破産会社の帳簿書類の調査の結果、本件各事業年度の法人税の申告書に記載された所得金額及び納付すべき税額に誤りがあるものと認め、平成五年六月一〇日付けで、次のアないしウ記載のとおり、各更正処分(以下「本件各更正処分」といい、これらを係争事業年度別に個別に示すときは、それぞれ「昭和六三年一二月期更正処分」、「平成元年一二月期更正処分」、「平成二年一二月期更正処分」という。)並びに重加算税及び過少申告加算税の各賦課決定(以下「本件各加算税賦課決定」といい、これらを係争事業年度別に個別に示すときは、それぞれ「昭和六三年一二月期加算税賦課決定」、「平成元年一二月期加算税賦課決定」、「平成二年一二月期加算税賦課決定」という。また、本件各更正処分と本件各加算税賦課決定を併せて、以下「本件各課税処分」という。)をした。

ア 昭和六三年一二月期

a 所得金額 一七億四六〇一万〇〇〇四円

b 納付すべき税額 七億一八七七万六七〇〇円

c 重加算税 一五三九万三〇〇〇円

イ 平成元年一二月期

a 所得金額 二三億四〇三一万九四四三円

b 納付すべき税額 九億三七三六万六六〇〇円

c 重加算税 一八万二〇〇〇円

d 過少申告加算税 一六万四〇〇〇円

ウ 平成二年一二月期

a 所得金額 五八億四五〇二万六三六一円

b 納付すべき税額 二一億八三〇八万〇二〇〇円

c 重加算税 四億五二八一万九五〇〇円

d 過少申告加算税 五二万二〇〇〇円

(2) 破産会社は、平成五年五月三〇日、東京地方裁判所に対し会社更正法に基づく更正手続の開始の申立てをし、同年六月五日付けで永井津好が保全管理人に選任されていたところ、同保全管理人は、本件各課税処分を不服として、同年八月二日、東京国税局長に対し異議申立てを行ったが、右異議申立てをした日の翌日から起算して三か月を経過しても決定がされなかったので、同年一二月二〇日、右異議申立てに対する決定を経ないで、国税不服審判所長に対し審査請求を行った(甲五、弁論の全趣旨)。

(3) 原告は、右審査請求をした日の翌日から起算して三か月を経過しても裁決がされなかったため、平成八年五月二七日、本件訴訟を提起したところ、その後、国税不服審判所長は、前記(二)(3)記載の審査請求と併合審理の上、平成九年一一月一七日付けで、平成元年一二月期更正処分のうち所得金額二三億三九一二万五一八六円、納付すべき税額九億三六八六万五一〇〇円を超える部分並びに同期加算税賦課決定のうち重加算税一万七五〇〇円及び過少申告加算税一六万一〇〇〇円を超える部分を取消し、その余の本件各課税処分に対する審査請求を棄却する旨の裁決をした(記録により明らかな事実)。

二  本件各課税処分の根拠等に関する被告の主張

(本件各更正処分の根拠等)

1 昭和六三年一二月期更正処分の根拠

被告が本訴において主張する破産会社の昭和六三年一二月期の所得金額は、一七億四六〇一万〇〇〇四円であり、その算定根拠は、次のとおりである。

(所得金額の算出経過)

(一) 申告所得金額 一六億四一二八万四五〇四円

(二) 加算項目

受贈益除外額 一億九一一一万一五〇〇円

(三) 減算項目

減算項目合計額 八六三八万六〇〇〇円

(内訳)

(1) 補助金認容額 四九八〇万円

(2) 賞与認容額 二二七万二〇〇〇円

(3) 雑収入否認額 三四三一万四〇〇〇円

(四) 所得金額((一)+(二)-(三)) 一七億四六〇一万〇〇〇四円

(算定根拠の詳細)

(一) 申告所得金額 一六億四一二八万四五〇四円

右金額は、破産会社が被告に提出した昭和六三年一二月期の確定申告書に記載された所得金額である(争いがない。)。

(二) 受贈益除外額 一億九一一一万一五〇〇円

(1) 破産会社は、昭和六三年一一月一〇日、破産会社の役員及び従業員一六名(以下「旧株主」という。)から、同人らが所有していた破産会社の関連会社である日産機材株式会社(平成二年七月二七日付けの商号変更により、「ハニックス株式会社」となる。以下、商号変更の前後を問わず「日産機材」という。)の株式(以下「日産株」という。)合計五万三〇三五株及びリースサービス株式会社(平成二年七月二五日付けの商号変更により、「ハニックスレンタサービス株式会社」となる。以下、商号変更の前後を問わず「リースサービス」という。)の株式(以下「リース株」という。)合計二万八七〇〇株を取得した(争いがない。)。

その際、破産会社は、右各株式の一株当たりの時価を日産株三四〇〇円、リース株一八〇〇円と適正に算定していたにもかかわらず(右各株式の時価については、争いがない。)、いずれも右時価よりも低い対価である一株五〇〇円の額面価額で取得しており、右時価と現実の対価との差額に相当する利益(以下「本件受贈益」という。)を得た。

しかるに、破産会社は、破産会社の帳簿には、右各株式の取得対価として時価による算出額を計上して、実際に旧株主に支払った一株五〇〇円の対価との差額を、別表1記載の破産会社が管理する簿外の旧株主名義の普通預金口座(以下「本件一六口座」といい、そこに入金された預金を「本件簿外預金」という。)に入金することにより、破産会社の公表帳簿から本件受贈益を除外し、昭和六三年一二月期の確定申告においてこれを申告しなかった。

(2) そこで、被告は、次の計算により、本件受贈益を一億九一一一万一五〇〇円と算定し、これを破産会社の申告所得金額に加算した。

(計算式)

ア 日産株受贈益=(三四〇〇-五〇〇)円×五万三〇三五株=一億五三八〇万一五〇〇円

イ リース株受贈益=(一八〇〇-五〇〇)円×二万八七〇〇株=三七三一万円

ウ 本件受贈益=ア+イ=一億九一一一万一五〇〇円

(三) 補助金認容額 四九八〇万円

(1) 破産会社は、昭和六三年七月二〇日及び同年一一月一四日に第三者割当の方法により新株を発行した際、新株の払込金額を一株当たり一万四〇〇〇円としたが、実際の払込金額を役員会参与等の者については一株当たり一万二〇〇〇円、従業員等については一株当たり一万円とし、その差額、すなわち、役員会参与等の者については二〇〇〇円、従業員等については四〇〇〇円を別表2記載のとおり、新株取得のための補助金として支給した。

(2) そこで、被告は、右補助金四九八〇万円を損金と認め申告所得金額から減算した。

(四) 賞与認容額 二二七万二〇〇〇円

(1) 破産会社は、昭和六三年一二月一四日、従業員須藤菊雄に対して、簿外で賞与二二七万二〇〇〇円を支払った。

(2) そこで、被告は、右金額を申告所得金額から減算した。

(五) 雑収入(自己株式売却益)否認額 三四三一万四〇〇〇円

(1) 破産会社は、昭和六三年五月二五日ころ、別表3記載のとおり自己株式一万七四三二株を売却し、同年一一月一一日、右売買代金合計額四三〇三万円が大和銀行川越支店の破産会社名義と当座預金に入金されたとして、昭和六三年一二月期の確定申告において、右売買代金合計額と右自己株式の帳簿価額合計額八七一万六〇〇〇円(一株当たり五〇〇円)との差額三四三一万四〇〇〇円を雑収入として申告した(争いがない。)。

しかしながら、右株式売却は、破産会社が自己株式を簿外で所有する目的で仮装された実態のない取引であって、右当座預金への入金は、富士銀行上福岡支店の破産会社名義の当座預金から出金された四三〇三万円が振り込まれたにすぎず(右入金が破産会社名義の右当座預金から出金された事実については、争いがない。)、破産会社が右株式を譲渡した事実も、その譲受人らが破産会社に売買代金を支払った事実も認められないから、破産会社に右雑収入が生じたものとは認められない。

(2) そこで、被告は、右雑収入の額三四三一万四〇〇〇円を申告所得金額から減算した。

2 昭和六三年一二月期の更正処分の適法性

右1記載のとおり、破産会社の昭和六三年一二月期の所得金額は一七億四六〇一万〇〇〇四円であるから、これと同額を破産会社の所得金額とする昭和六三年一二月期更正処分は適法である。

3 平成元年一二月期更正処分の根拠

被告が本訴において主張する破産会社の平成元年一二月期の所得金額は、二三億三九一二万五一八六円であり、その算定根拠は、次のとおりである。

(所得金額の算出経過)

(一) 申告所得金額 二三億三五一四万〇一六九円

(二) 加算項目

加算項目合計額 一六九五万四八二三円

(内訳)

(1) 交際費等損金不算入額 二二一万八五〇九円

(2) 支払保険料過大計上額 九六七万三六三〇円

(3) 新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額 一〇万五〇〇〇円

(4) 雑損失過大計上額 四九二万〇七五〇円

(5) 受取利息除外額 三万六九三四円

(三) 減算項目

減算項目合計額 一二九六万九八〇六円

(内訳)

(1) 雑費認容額 三九万七八〇〇円

(2) 事業税認定損の額 一二五六万七〇〇〇円

(3) 貸倒引当金繰入超過額過大計上額 五〇〇六円

(四) 所得金額((一)+(二)-(三)) 二三億三九一二万五一八六円

(算定根拠の詳細)

(一) 申告所得金額 二三億三五一四万〇一六九円

右金額は、破産会社が被告に提出した平成元年一二月期の確定申告書に記載された所得金額である(争いがない。)。

(二) 交際費等損金不算入額 二二一万八五〇九円

(1) 破産会社は、平成元年一二月期の確定申告において、平成六年法律第二二号による改正前の租税特別措置法六二条に規定する交際費等の損金不算入額を二一八六万九四六三円とし(破産会社の同期末における資本の金額は五〇〇〇万円を超えているから、同条一項により、破産会社の支出する交際費等の全額が損金の額に算入されないものである。)、他方、別表4の(1)ないし(3)記載の支出合計額二二一万八五〇九円については、同別表「勘定科目」欄記載の交際費以外の勘定科目に帰属する支出で損金に当たるものとして申告していた。

しかし、別表4の(1)ないし(3)記載の支出(合計二二一万八五〇九円)は、いずれも平成六年法律第二二号による改正前の租税特別措置法六二条三項に規定する交際費等に当たるものであって、損金の額に算入することはできないものである(以上につき、争いがない。)。

(2) そこで、被告は、右二二一万八五〇九円を申告所得金額に加算した。

(三) 支払保険料過大計上額 九六七万三六三〇円

(1) 破産会社は、平成元年一二月期の確定申告において、別表5に記載した保険に加入し、破産会社が支払った保険料合計額一〇四〇万二九〇〇円を損金の額に計上し、他方、保険料相当額を全く資産に計上していなかった。

しかし、法人税の算出については、<1>法人が自己を契約者とし、役員又は使用人を被保険者とする養老保険(終身)に加入して、保険料の受取人を当該法人とした場合は、支払った保険料の全額を資産に計上すべき取扱いとされており(法人税基本通達九-三-四(1))、また、<2>法人が保険期間が三年以上で、かつ、保険期間の満了後に満期返戻金が支払われる損害保険契約に係る保険料を支払った場合は、当該保険料のうち積立保険料に相当する部分の金額を資産に計上すべき取扱いとされている(法人税基本通達九-三-九)。

これによると、別表5に記載した保険のうち、三井生命保険及び第一生命保険に係るものについては前記<1>により、大東京火災海上保険に係るもの(保険期間五年)については前記<2>により、それぞれ資産に計上すべき金額を算出する必要があるところ、これを計算すると、破産会社が資産に計上すべき金額は、別表5の<2>欄記載のとおり、九六七万三六三〇円となる(以上につき、争いがない。)。

(2) そこで、被告は、右九六七万三六三〇円を申告所得金額に加算した。

(四) 新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額

一〇万五〇〇〇円

(1) 破産会社は、平成元年一二月期の確定申告において、平成元年九月一八日に、群馬県沼田市町田町字土塔原一六三六番一の土地七五三平方メートル及び同所一六二七番一の土地二一一平方メートル(以下、右二筆の土地を併せて「本件土地」という。)を二〇八三万二〇〇〇円で取得し、本件土地が、平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二に規定する新規取得土地等に当たるものとして、同条に規定する負債の利子の損金不算入額を三一万二四八〇円と算定して申告した(争いがない。)。

しかし、破産会社は、本件土地の取得に当たり、その代金として右二〇八三万二〇〇〇円のほかに、破産会社の簿外資金から七〇〇万円を売主に支払っていたから、右七〇〇万円を平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二に規定する損金不算入額の計算の基礎とすべきであった。しかして、本件土地の取得価額を破産会社の申告に係る売買代金二〇八三万二〇〇〇円に右七〇〇万円を加算した二七八三万二〇〇〇円として、新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額を計算し直すと、別表6記載のとおり、損金不算入額は四一万七四八〇円となる。

(2) そこで、被告は、右損金不算入額四一万七四八〇円と破産会社の申告に係る損金不算入額三一万二四八〇円との差額一〇万五〇〇〇円を申告所得金額に加算した。

(五) 雑損失過大計上額 四九二万〇七五〇円

(1) 破産会社は、平成元年一二月期の確定申告において、平成元年三月二〇日に破産会社の監査役を退任した佐藤明夫に対して、退職金を四九二万〇七五〇円支給するとして、同額を平成元年一二月期の雑損失に計上するとともに、同期末の未払金として申告していた。

しかし、右退職金の支払に関する取締役会等の支払決議がなく、また、佐藤明夫は、監査役退任後も、破産会社に購買部長として勤務しており、破産会社を退職した事実は認められないから、同人に対する退職金を同期の損金の額に算入することはできない(以上につき、争いがない。)。

(2) そこで、被告は、右四九二万〇七五〇円を申告所得金額に加算した。

(六) 受取利息除外額 三万六九三四円

(1) 破産会社は、平成元年一二月期の確定申告において、本件一六口座に入金された受取利息の金額三万四七七〇円(ただし、受取利息に係る所得税一五パーセント及び道府県民税五パーセントの各源泉徴収後の金額であり、明細は、別表7の(1)及び(2)記載のとおりである。)とこれに係る道府県民税の利子割の額二一六四円(法人税法三八条第二項三号により、破産会社が納付した右道府県民税は損金の額に算入されない。)の合計額三万六九三四円を申告していなかった。

(2) そこで、被告は、右合計額三万六九三四円を申告所得金額に加算した。

(七) 雑費認容額 三九万七八〇〇円

(1) 破産会社は、平成元年一二月期において、破産会社の従業員であった小田切一基が破産会社を退職し、同人が所有していた破産会社の株式を関東建機株式会社及びハンドーザー工業社員持株会(以下「社員持株会」という。)に譲渡するに当たり、同人が破産会社の株式を取得するに際して支払った銀行借入金の利息相当額三九万七八〇〇円を簿外で負担していたが、同期の確定申告において、これを破産会社の損金の額に算入しなかった。

(2) そこで、被告は、右三九万七八〇〇円を申告所得金額から減算した。

(八) 事業税認定損の額 一二五六万七〇〇〇円

被告は、昭和六三年一二月期更正処分により、増加する事業税に関して、別表8記載のとおり、一二五六万七〇〇〇円を事業税認定損の額として破産会社の申告所得金額から減算した。

(九) 貸倒引当金繰入限度超過額の過大計上額 五〇〇六円

(1) 破産会社は、平成元年一二月期の確定申告において、同期の貸倒引当金として、一億二〇〇〇万円を損金経理により繰り入れたが、右繰入額のうちに限度超過額が七六四万一〇三〇円あるとして、同超過額を益金の額に算入して申告していた(争いがない。)。

しかし、破産会社は、右繰入額以外に、社員持株会に対して簿外の立替金(貸付金)六三万二〇〇〇円を有しており、これは、平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法五二条一項に規定する貸金の額に当たると認められるから、右立替金の額を破産会社の申告に係る貸金の額に加えた上で、平成一〇年政令第一〇五号による改正前の法人税法施行令九七条に基づいて貸倒引当金の繰入限度額を計算し直すと、別表9記載のとおり繰入限度額は破産会社の計算額に比し五〇〇六円増加し、したがって、破産会社の申告に係る右限度超過額も、五〇〇六円過大となる。

(2) そこで、被告は、右五〇〇六円を申告所得金額から減算した。

4 平成元年一二月期更正処分の適法性

右3記載のとおり、破産会社の平成元年一二月期の所得金額は二三億三九一二万五一八六円であるから、これと同額を破産会社の所得金額とする平成元年一二月期更正処分(ただし、審査裁決により一部取り消された後のもの。以下同じ。)は適法である。

5 平成二年一二月期更正処分の根拠

被告が本訴において主張する破産会社の平成二年一二月期の所得金額は、五八億四五〇九万三九九一円であり、その算定根拠は、次のとおりである。

(所得金額の算出経過)

(一) 申告所得金額 二五億八〇四七万五〇七八円

(二) 加算項目

加算項目合計額 三四億一四五七万二二〇八円

(内訳)

(1) 有価証券売却益除外額 三二億四三八五万九六四二円

(2) 受取配当金除外額 三〇七万八四〇〇円

(3) 交際費等損金不算入額 七二一万二八〇六円

(4) 支払保険料過大計上額 一〇〇八万五〇三〇円

(5) 受取利息除外額 二五六九万九九五五円

(6) 売上原価過大計上額 一億一八八三万七五五九円

(7) 雑費否認額 五三七万三八一〇円

(8) 新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額 四二万円

(9) 前事業年度における貸倒引当金の益金算入額 五〇〇六円

(三) 減算項目

減算項目合計額 一億四九九五万三二九五円

(内訳)

(1) 売上金額過大計上額 一億二二九五万円

(2) 新規取得土地等に係る負債の利子の損金認容額 二三一八万八二九六円

(3) 事業税認定損の額 四七万八二〇〇円

(4) 貸倒引当金繰入限度超過額過大計上額 三三三万六七九九円

(四) 所得金額((一)+(二)-(三)) 五八億四五〇九万三九九一円

(算定根拠の詳細)

(一) 申告所得金額 二五億八〇四七万五〇七八円

右金額は、破産会社が被告に提出した平成二年一二月期の確定申告書に記載された所得金額である(争いがない。)。

(二) 有価証券売却益除外額 三二億四三八五万九六四二円

(1) 破産会社は、前記1(算定根拠の詳細)(五)(1)記載のとおり、昭和六三年五月二五日ころ自己株式一万七四三二株を別表3記載のとおり譲渡したとする虚偽の帳簿処理等を行い、右株式を簿外で所有していたほか、他人名義を用いて同年七月二日の増資に係る二万一〇四八株を簿外で所有しており、その結果、破産会社は、同年一二月二〇日時点で、合計三万八四八〇株の自己株式(以下「本件名義株」といい、そのうち、もともと同社が所有していた一万七四三二株を除く二万一〇四八株を「本件増資名義株」という。)を簿外で所有するに至った。なお、その一株当たりの取得価額は、いずれも五〇〇円であった。

破産会社は、平成二年二月一五日に、旧株(発行済株式の総数は六二万株)一株当たりについて、〇・三株の新株を発行したことにより、右新株発行後の破産会社の発行済株式の総数は八〇万六〇〇〇株となり、破産会社の所有する本件名義株の数は、前記三万八四八〇株に一・三を乗じた五万〇〇二四株となった。さらに、破産会社は、同年四月二四日に株式を分割し、一株当たりの額面価額を従前の五〇〇円から五〇円に改めたことにより、破産会社の発行済株式の総数は八〇六万株となり、本件名義株の数は五〇万〇二四〇株となった。

破産会社は、同年七月二七日及び同年一一月七日、野村證券本店を通じて、本件名義株五〇万〇二四〇株のうち、須藤菊雄ほか三名の名義となっていた自己株式合計二一万三〇〇〇株を譲渡し、別表10記載のとおり、右譲渡により三二億四三八五万九六四二円の利益(以下「本件有価証券売却益」という。)を得たが、平成二年一二月期の確定申告において、これを益金の額に算入しなかった。

(2) そこで、被告は、本件有価証券売却益三二億四三八五万九六四二円を申告所得金額に加算した。

(三) 受取配当金除外額 三〇七万八四〇〇円

(1) 破産会社は、平成元年一二月期に係る配当金を平成二年三月二〇日に支払っており、同期末において破産会社が簿外で所有していた本件名義株三万八四八〇株についても、一株当たり一〇〇円の配当金を支払っている。すなわち、破産会社は、破産会社の自己株式に係る配当金三〇七万八四〇〇円(ただし、所得税源泉徴収後の金額であり、その明細は別表11記載のとおりである。)について、いったん名義人の各口座に振り込んだ上で、同年四月一三日までにその全額を回収し、同日、本件一六口座の一つである広川守名義の協和銀行上福岡支店(現在は、あさひ銀行上福岡東口支店)の普通預金口座(以下「広川口座」という。)に入金して、破産会社の簿外資金としたものである。

ところで、法人税法二三条一項は、法人が受ける利益の配当の額の一〇〇分の八〇に相当する金額を益金の額に算入しない旨規定し、同条五項は、確定申告書に益金の額に算入されない配当の額及びその計算に関する明細の記載があることを同条一項の適用を受ける条件とした上で、益金の額に算入されない配当の額は、かかる明細に記載された当該金額を限度とする旨を明らかにしているところ、破産会社は、平成二年一二月期の確定申告書に受取配当等の益金不算入額を一億二七六五万〇〇一五円と記載して、その全額について同項の適用を受けているので、本件名義株に係る配当金について、右条項を適用する余地はない。

(2) そこで、被告は、右自己株式に係る配当金の額三〇七万八四〇〇円を申告所得金額に加算した。

(四) 交際費等損金不算入額 七二一万二八〇六円

(1) 破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、平成六年法律第二二号による改正前の租税特別措置法六二条に規定する交際費等の損金不算入額を二九九五万〇二二四円とし(破産会社の同期末における資本の金額は五〇〇〇万円を超えているから、同条一項により、破産会社の支出する交際費等の全額が損金の額に算入されないものである。)、他方、別表12の(1)ないし(4)記載の支出合計額七二一万二八〇六円については、同別表「勘定科目」欄記載の交際費以外の勘定科目に帰属する支出で損金に当たるものとして申告していた。

しかし、別表12の(1)ないし(4)記載の支出(合計七二一万二八〇六円)は、いずれも平成六年法律第二二号による改正前の租税特別措置法六二条三項に規定する交際費等に該当するものであって、損金の額に算入することはできないものである(以上につき、争いがない。)

(2) そこで、被告は、右七二一万二八〇六円を申告所得金額に加算した。

(五) 支払保険料過大計上額 一〇〇八万五〇三〇円

(1) 破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、平成元年一二月期と同様に、別表13に記載した保険に係る保険料の全額を損金の額に計上し、他方、保険料相当額を全く資産に計上していなかった。

平成元年一二月期と同様に、右保険料のうち資産に計上すべき金額を計算すると、別表13の<2>欄記載のとおり、右金額は一〇〇八万五〇三〇円となる(争いがない。)。

(2) そこで、被告は、右一〇〇八万五〇三〇円を申告所得金額に加算した。

(六) 受取利息除外額 二五六九万九九五五円

(1) 破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、次のアないしウ記載のとおり受取利息の合計額二五六九万九九五五円を申告しなかった。

ア 破産会社は、本件簿外預金の利息として一〇五万〇一四九円(ただし、受取利息に係る所得税一五パーセント及び道府県民税五パーセントの各源泉徴収後の預金口座入金額であり、明細は、別表14の(1)及び(2)の各<1>欄記載とおりである。)を受け取っているが、右受取利息とこれに係る道府県民税の利子割の額六万五六二二円の合計一一一万五七七一円を申告しなかった。

イ 破産会社は、平成二年七月二七日、本件名義株の一部である自己株式一五万二〇〇〇株(明細は、別表10記載のとおり)を譲渡し、その収入金額のうち二五億一一二三万五七五一円を同年八月一日に広川口座に入金し、同月一二日に同口座から一二億円を出金して、協和銀行上福岡支店(当時)で二口の広川守名義の定期預金を設定した。

右定期預金の設定により、破産会社は、別表14の(3)に記載した日に同預金に係る受取利息六四〇万二三四六円(ただし、受取利息に係る所得税一五パーセント及び道府県民税五パーセントの各源泉徴収後の預金口座入金額であり、明細は別表14の(3)記載のとおりである。)を受け取っているが、右受取利息及びこれに係る道府県民税の利子割の額四〇万〇一四五円の合計六八〇万二四九一円を申告しなかった。

ウ 破産会社は、右イ記載のとおり、広川口座に入金した自己株式の譲渡収入を原資として、別表14の(4)に記載した者に、年四パーセントの利率で計算した一年分の利息の額を天引きした上で、資金を貸し付けていた。

破産会社は、平成二年一二月期において、右貸付けによる受取利息として別表14の(4)記載のとおり合計一七七八万一六九三円を受け取っているが、これを申告しなかった。

(2) そこで、被告は、右各受取利息の合計額二五六九万九九五五円を申告所得額に加算した。

(七) 売上原価過大計上額 一億一八八三万七五五九円

(1) 破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、次のアないしウ記載のとおり、売上原価を合計一億一八八三万七五五九円過大に計上した(争いがない。)。

ア 破産会社は、後記(二)(1)ア記載の試作品等に係る架空売上げを計上した際、破産会社が在庫として所有していた試作機の取得価額四〇万円(明細は、別表15の(1)記載のとおりである。)を試作機の期末棚卸金額から除外することにより、売上原価を同額過大に計上した。

イ 破産会社は、後記(二)(1)イ記載の架空売上げを計上した際、これに係る架空の売上原価(仕入)を別表15の(2)記載のとおり八三九五万円計上した。

ウ 破産会社は、前記アの試作機以外に平成二年一二月期末の製品、材料及び仕掛品に係る棚卸金額をそれぞれ別表16の(1)ないし(3)記載のとおり、合計で三四四八万七五五九円過少に計上することにより、売上原価を同額過大に計上した。

(2) そこで、被告は、右売上原価過大計上額合計一億一八八三万七五五九円を申告所得金額に加算した。

(八) 雑費否認額 五三七万三八一〇円

(1)ア 破産会社は、平成元年一二月期において損金の額に算入したリースサービスに対する同期の業務委託補助金五三九万三〇〇〇円を、平成二年一二月期においても雑貨として損金の額に算入していた(争いがない。)。

イ 破産会社は、前記(六)(1)ウ記載の簿外資金の貸付けに当たり、別表17記載のとおり、振込手数料等として一万九一九〇円を支払っているが、同額を破産会社の損金の額に算入していなかった。

(2) そこで、被告は、右(1)ア記載の雑費額から同イ記載の雑費額を控除した金額五三七万三八一〇円の損金算入を否認し、同額を申告所得金額に加算した。

(九) 新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額 四二万円

(1) 破産会社は、本件土地を取得する際、売主に簿外で七〇〇万円を支払っているところ、平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二第三項二号は、当該土地の取得の日から四年を経過する日までの期間を負債利子損金不算入期間としているから、平成元年九月一八日に取得された本件土地に関しては、平成二年一二月期のすべてが負債利子損金不算入期間に含まれる。そして、同条に基づいて、右七〇〇万円に係る新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額を計算すると、別表18記載のとおり損金不算入額は、四二万円となる。

(2) そこで、被告は、右四二万円を申告所得金額に加算した。

(一〇) 前事業年度における貸倒引当金の益金算入額 五〇〇六円

法人税法五二条二項により、前事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入された貸倒引当金勘定の金額は、翌事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入されるので、被告は、平成元年一二月期において損金として認容した五〇〇六円を平成二年一二月期の申告所得金額に加算した。

(一一) 売上過大計上額 一億二二九五万円

(1) 破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、次のア及びイ記載のとおり、売上げを合計一億二二九五万円過大に計上した(争いがない。)。

ア 破産会社は、平成二年一一月二〇日付けで日産機材に対する試作品等に係る売上金額合計三〇五〇万円(明細は、別表15の(1)の「架空売上」欄記載のとおりである。)を計上しているが、これは実体のない架空の売上げである。

イ 破産会社は、別表19の<1>ないし<4>欄記載のとおり、日産機材に対する売上金額合計九二四五万円を計上しているが、これは実体のない架空の売上げである。

(2) そこで、被告は、右売上過大計上額合計一億二二九五万円を申告所得金額から減算した。

(一二) 新規取得土地等に係る負債の利子の損金認容額 二三一八万八二九六円

(1) 新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額の計算に関しては、平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二第三項二号により、当該土地の取得の日から四年を経過するまでの期間を負債利子損金不算入期間としているところ、破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、<1>平成元年九月一八日に取得した本件土地の取得価額のうち平成元年一二月期において申告した二〇八三万二〇〇〇円、及び<2>本件土地につき後述する覚書に基づき平成二年六月一八日に支払った六三六万二〇〇〇円について、損金不算入額を計算せず、他方、<3>平成二年三月二六日に取得した群馬県沼田市町田町地内の三万二八五五・六〇平方メートルの土地の代金について損金不算入額を計算して申告をした。

しかしながら、次のアないしウ記載のとおり、<1>及び<2>については、平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二による損金不算入額の計算の対象とすべきであり、<3>については、同条による損金不算入額の計算の対象とすべきではなかった(以上につき、争いがない。)。

ア 破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、本件土地の取得価額として平成元年一二月期の帳簿に計上した金額二〇八三万二〇〇〇円について、新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額の計算を行っていないが、平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二第三項二号により、平成二年一二月期のすべてが本件土地の負債利子損金不算入期間となる。そして、これにつき右損金不算入額を計算すると、別表20の(1)記載のとおり、一二四万九九二〇円となる。

イ 破産会社は、本件土地を取得するに際して、本件土地が県営沼田北部土地改良事業の計画地に当たっており、右事業終了時に換地が予定されていたことなどから、当該換地後に確定した地積と本件土地売買契約書に記載されている本件土地の地積とが相違した場合は、本件土地の売買契約に係る一平方メートル当たりの単価で、右相違面積分の代金を計算し、決済する旨の覚書を本件土地の売主と交わしていたところ、破産会社は、平成二年六月一八日、右覚書に基づき売主に六三六万二〇〇〇円を支払った。

破産会社は、平成二年一二月期の申告において、右覚書に基づいて支払った金員に関し、新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額の計算を行っていないが、平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二第四項により、新規取得土地等の取得のための支払が二回以上にわたって行われた場合には、二回目以降の支払日及び支払額に基づいて、初回部分とは別途に負債の利子の損金不算入額を計算すべきところ、これを計算すると、別表20の(2)記載のとおり、一九万〇八六〇円となる。

ウ 破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、平成二年三月二六日に取得した群馬県沼田市町田町地内の三万二八五五・六〇平方メートルの土地について、平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二の新規取得土地等に当たるものとして、負債の利子の損金不算入額を二四六二万九〇七六円と計算しているが、右土地は、同条三項一号イ(3)に規定する土地に該当し、同条の新規取得土地等から除外されているから、右土地については、損金不算入額の計算の対象とすべきではなく、破産会社が右土地に係る負債の利子の損金不算入額とした二四六二万九〇七六円は、損金の額に算入されるべきものである。

(2) そこで、被告は、右(1)のウ記載の金額から同ア及びイ記載の合計額を差し引いた金額二三一八万八二九六円(破産会社が過大に損金不算入とした金額)を申告所得金額から減算した。

(一三) 事業税認定損の額 四七万八二〇〇円

被告は、平成元年一二月期更正処分により、増加する事業税に関して、別表21記載のとおり、四七万八二〇〇円を事業税認定損の額として、破産会社の申告所得金額から減算した。

(一四) 貸倒引当金繰入限度超過額過大計上額 三三三万六七九九円

(1) 破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、同期の貸倒引当金として、一億七〇〇〇万円を損金経理により繰り入れたが、右繰入額のうちに限度超過額が三三三万六七九九円あるとして、同超過額を益金の額に算入して申告していた。

しかし、破産会社は、右繰入限度額計算上、貸金の額に加えるべき次のア及びイの金額を加えておらず、他方、貸金の額に加えるべきではない次のウの金額を加えて計算していた。したがって、破産会社の計算した貸金の額にア及びイの金額を加え、ウの金額を差し引いた上で、平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法五二条一項及び平成一〇年政令第一〇五号による改正前の同法施行令九七条に基づいて貸倒引当金の繰入限度額等を計算し直す必要があるところ、これを計算すると、別表22記載のとおり繰入限度額は一億八五四〇万七九七九円となり、破産会社の繰入額一億七〇〇〇万円を超えることになる。

ア 破産会社が社員持株会に対して有していた簿外の立替金七三万五五〇〇円

イ 前記(六)(1)ウ記載の破産会社の簿外の貸付金の平成二年一二月期末残高二四億〇六一九万九三九九円

ウ 前記(二)(1)記載の架空売上げに係る期末売掛金(ただし、架空売上げに係る消費税一一七万円を含む。)四〇一七万円(争いがない。)

(2) そこで、被告は、破産会社の申告に係る右限度超過額三三三万六七九九円の全額を申告所得金額から減算した。

6 平成二年一二月期更正処分の適法性

右5記載のとおり、破産会社の平成二年一二月期の所得金額は五八億四五〇九万三九九一円であるところ、この金額の範囲内である五八億四五〇二万六三六一円を破産会社の所得金額とする平成二年一二月期更正処分は適法である。

(本件各加算税賦課決定の根拠等)

1 本件各更正処分により納付すべき税額

国税通則法(以下「通則法」という。)六五条、六八条及び同法施行令二八条は、納税者が仮装、隠ぺいに基づいて税額を過少に申告した場合は、同法六五条に規定する過少申告加算税に代えて重加算税を課す旨、及び重加算税は、当該更正処分に基づいて納付すべき税額から、隠ぺい又は仮装されていない事実のみに基づいて更正処分があったものとした場合において、その更正処分に基づいて納付すべき税額(以下「過少対象増加税額」という。)を控除した税額(以下「重加対象増加税額」という。)を基礎として計算すべき旨を規定している。

そこで、まず、本件各更正処分に基づき納付すべき税額を係争事業年度別に整理すると、別表23ないし25記載のとおりである。

2 重加算税の計算基礎とした加算事項等

本件各事業年度のうち重加算税を賦課すべき昭和六三年一二月期と平成二年一二月期について、加算事項、減算事項別に重加算税の計算の対象とすべき部分とそれ以外の部分に区分すると、別表26及び27記載のとおりであり、右両期とも過少対象増加税額の計算の基礎とすべき所得金額の増加はないから、右納付すべき税額の全額が重加対象増加税額となる。また、被告が、右両期について隠ぺい又は仮装の事実が認められると判断した根拠は、それぞれ次のとおりである。

(一) 昭和六三年一二月期

前記(本件各更正処分の根拠等)1(算定根拠の詳細)(二)(1)記載のとおり、破産会社は、旧株主から日産株及びリース株を一株当たり五〇〇円で取得したにもかかわらず、日産株を一株当たり三四〇〇円、リース株を一株当たり一八〇〇円で取得したかのように、帳簿に虚偽の記載をし、その差額を本件簿外預金とするなどして代金の支払事実を仮装・隠ぺいした。

なお、昭和六三年一二月期については、加算事項は重加算税の対象となる受贈益除外額の一項目だけであり、過少対象増加税額は存在しないから、昭和六三年一二月期更正処分に基づき納付すべき税額のすべてが重加対象増加税額になることは明らかである。

(二) 平成二年一二月期

(1) 加算事項

ア 有価証券売却益除外額

前記(本件各更正処分の根拠等)5(算定根拠の詳細)(二)(1)記載のとおり、破産会社は、本件有価証券売却益を得ているにもかかわらず、破産会社自身が所有していた本件名義株を役員等の名義とし、公表帳簿に記載せず、本件名義株の一部を名義人が譲渡したかのように仮装し、また、譲渡したことによる収入等を簿外預金とするなどして、本件有価証券売却益を仮装・隠ぺいして申告しなかった。

イ 受取配当金除外額

前記(本件各更正処分の根拠等)5(算定根拠の詳細)(三)(1)記載のとおり、破産会社は、破産会社自身が所有していた本件名義株を役員等の名義とし、公表帳簿に記載せず、名義人が右株式を所有しているかのように仮装し、当該株式に係る配当金もその名義人に支払ったとする帳簿処理をする一方、当該配当金を各名義人から全額回収して、簿外の預金口座である広川口座に入金していた。しかるに、破産会社は、右回収に係る帳簿処理等を一切行わないなど、右配当金に係る収入を仮装・隠ぺいして申告しなかった。

ウ 受取利息除外額

a 本件簿外預金及び定期預金に係る受取利息について

前記(本件各更正処分の根拠等)5(算定根拠の詳細)(六)(1)のア及びイ記載のとおり、破産会社は、本件簿外預金及び定期預金を役員等の名義として、名義人の預金であるかのように仮装し、また、右預金等及びこれに係る受取利息を破産会社の帳簿に記載しないことなどにより、右受取利息を仮装・隠ぺいして申告しなかった。

b 貸付金に係る受取利息について

前記(本件各更正処分の根拠等)5(算定根拠の詳細)(六)(1)ウ記載のとおり、破産会社は、本件簿外預金を資金として、破産会社の役員等に貸付けを行いその利息を収受したにもかかわらず、右貸付け及び利息収受の事実を帳簿に一切記載せず、利息収入を隠ぺいした。

エ 新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額

前記(本件各更正処分の根拠等)5(算定根拠の詳細)(九)記載のとおり、破産会社は、本件土地の売主に対して、売買契約書に記載された売買金額以外に、破産会社の簿外資金から七〇〇万円を支払い、破産会社の帳簿等及び申告書に本件土地の取得価額を過少に記載して、本件土地の取得価額を仮装し、これに基づいて、新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額を過少に申告した。

(2) 減算事項

ア 雑費認容額

破産会社は、前記(本件各更正処分の根拠等)5(算出根拠の詳細)(六)(1)ウ記載の簿外貸付けを行うに当たり、振込手数料等の支払事実も隠ぺいして、帳簿に記載しなかった。

イ 貸倒引当金繰入限度超過額過大計上額

破産会社がその役員等に対して簿外で貸付けを行い、隠ぺい行為を行っていたことは、前記(1)ウb記載のとおりである。

3 過少申告加算税額及び重加算税額の計算

過少申告加算税額は、過少対象増加税額(ただし、通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後の金額。以下、加算税の基礎となる税額について同じ。)に同法六五条一項に基づき一〇〇分の一〇を乗じて計算し、重加算税額は重加対象増加税額に同法六八条一項に基づき一〇〇分の三五を乗じて計算する。

右に基づいて、本件各事業年度に係る加算税額を係争年度別に計算すると、別表28ないし30記載のとおりとなる。

4 本件各加算税賦課決定の適法性

(一) 昭和六三年一二月期について

昭和六三年一二月期加算税賦課決定は、別表28記載の重加算税額一五三九万三〇〇〇円と一致するから適法である。

(二) 平成元年一二月期について

平成元年一二月期の加算税の賦課については、本来、別表29記載のとおり、過少申告加算税額を一六万七〇〇〇円とすべきところ、平成元年一二月期加算税賦課決定(ただし、審査裁決により一部取り消された後のもの。以下同じ。)においては、過少申告加算税額を一六万一〇〇〇円とし、重加算税額を一万七五〇〇円としている。

過少申告加算税を課すべき場合に誤って重加算税を賦課した場合の重加算税賦課決定の効力については、重加算税の賦課決定が、その要件を欠き効力を有しないと判断される場合であっても、過少申告加算税の賦課の要件が存在する場合は、その限度においてなお処分の効力を有するものというべきである。けだし、通則法六五条の規定による過少申告加算税と同法六八条一項の規定による重加算税とは、ともに申告納税方式による国税について過少な申告を行った納税者に対する行政上の制裁として賦課されるものであって、同一の修正申告又は更正に係るものである限り、その賦課及び税額計算の基礎を同じくし、ただ、後者の重加算税は、前者の過少申告加算税の賦課要件に該当することに加えて、当該納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出するという不正手段を用いたとの特別の事由が存する場合に、当該基礎となる税額に対し、過少申告加算税におけるよりも重い一定比率を乗じて得られる金額の制裁を課することとしたものと考えられるから、両者は相互に無関係な別個独立の処分ではなく、重加算税の賦課は、過少申告加算税として賦課されるべき一定の税額に前記加重額に当たる一定の金額を加えた額の税を賦課する処分として、右過少申告加算税の賦課に相当する部分をその中に含んでいるものと解するのが相当であるからである。

したがって、平成元年一二月期加算税賦課決定のうち、過少申告加算税額についてはその全額(一六万一〇〇〇円)が、重加算税については、本来課すべきであった過少申告加算税額一六万七〇〇〇円と平成元年一二月期加算税賦課決定における過少申告加算税額との差額である六〇〇〇円の限度でそれぞれ適法である。

(三) 平成二年一二月期について

平成二年一二月期については、別表30記載のとおり、重加対象増加税額は一二億九九〇二万円となるから、重加算税額を四億五四六五万七〇〇〇円(右納付すべき税額に一〇〇分の三五を乗じた金額)として重加算税の賦課決定を行うべきところ、平成二年一二月期加算税賦課決定においては、過少申告加算税額を五二万二〇〇〇円、重加算税額を四億五二八一万九五〇〇円として加算税を賦課したものである。

そうすると、平成二年一二月期加算税賦課決定は、通則法により課すことのできる加算税額の範囲内で加算税を賦課したものであるから、適法である。

三  争点及び争点に関する当事者の主張

本件青色申告承認取消処分の取消しを求める請求の争点は、破産会社が平成二年一二月期に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載した事実があったか否かであり、本件各課税処分の取消しを求める請求の争点は、前記二記載の本件各課税処分の根拠となる事実(当事者間に争いがない事実を除く。)があったか否かある。

このうち本件訴訟における中心的な争点は、破産会社が本件受贈益及び本件有価証券売却益を得ているか否かであり、この点に関する当事者の主張は、次のとおりである。

1  破産会社が本件受贈益を得ているか否かについて

(被告の主張)

(一) 前記二(本件各更正処分の根拠等)1(算定根拠の詳細)(二)記載のとおり、破産会社は、旧株主から、日産株及びリース株をその額面価額である一株五〇〇円で取得しているところ、当時、日産株の時価は一株三四〇〇円、リース株の時価は一株一八〇〇円であったから、破産会社は、右の各時価と旧株主からの実際の取得価額の差額分の受贈益を得ているものである。

(二) 原告は、破産会社が右差額を本件一六口座において保管していた事実があったとしても、それは破産会社に帰属する所得ではなく、旧株主からの預り金にすぎない旨主張する。

しかしながら、破産会社は、旧株主に日産株及びリース株の買上価格が一株当たり五〇〇円であることを周知させ、右価額で右各株を旧株主から買い取ったものであり、これをあたかも時価で購入したかのごとく仮装するため、本件一六口座を破産会社の資金で開設し、右各株式の時価相当額(実際の取得価額と本件受贈益との合計額)を入金したものである。右仮装の結果、本件簿外預金は、破産会社の帳簿処理を要せず自由に使用できる資金として、破産会社の管理下に置かれ、破産会社の簿外賞与、破産会社の土地取得の裏金及び本件名義株の払込金など破産会社が負担すべき支出に、帳簿処理することなく充てられていたのであって、これが破産会社に帰属する資金であることは明らかである。

(原告の主張)

(一) 破産会社は、旧株主から日産株及びリース株を買い受けるに当たり、その時価(日産株について一株当たり三四〇〇円、リース株について一株当たり一八〇〇円)に基づいて計算した代金を支払っており、右株式の買受けについて破産会社に受贈益は生じていない。

(二) 被告は、破産会社が右譲渡代金を本件一六口座に入金し、それを破産会社が管理していたとして、日産株及びリース株の時価と額面価額との差額分について、破産会社に受贈益が生じたものと認定しているが、そもそも、本件一六口座は、破産会社が管理していたものではなく、破産会社の代表者であった広川昌こと廣川昌(以下「廣川昌」という。)が個人として管理していたものである。

(三) 仮に本件一六口座を破産会社が管理していたとしても、次のとおり、そこに入金されていた資金は旧株主からの預り金にすぎず、破産会社の所得となるものではないので、破産会社に本件受贈益は生じていない。

すなわち、破産会社が旧株主から日産株及びリース株を買い受けるに当たり、廣川昌は、旧株主に対し、右各株式を公開の見込まれる破産会社の株式に振り替えるとの約束をしており、本件一六口座に入金されていた資金は、旧株主との約束に基づき旧株主に割り当てるべき新株の払込金に充当する目的で、その間、破産会社が保管していた預り金にすぎないものである。

2  破産会社が本件有価証券売却益を得ているか否かについて

(被告の主張)

被告が、破産会社において本件有価証券売却益を得たものと認定した根拠は、前記二(本件各更正処分の根拠等)5(算定根拠の詳細)(二)記載のとおりであるが、さらにこれをふえんすれば、次のとおりである。

(一) 被告は、第一回増資以前に破産会社が所有していた自己株式一万七四三二株及び右増資によって発生した本件増資名義株二万一〇四八株の合計三万八四八〇株(ただし、平成二年二月一五日付けの無償増資前の株数)を本件名義株であると主張するものであるが、本件増資名義株二万一〇四八株が第一回増資で発生したかどうかはともかく、第三回増資が終了した時点で本件名義株三万八四八〇株が存在し、それが、本件名義株に係る念証を破産会社に差し入れた各名義人の株式の中に含まれていたことは明らかであり、本件名義株は払込人及びその所有が不明の浮株として存在していたものである。

(二) しかして、本件名義株三万八四八〇株は、その払込資金の流れをみれば、本件受贈益を資金源として発生した株式であることは明らかであるところ、前記1(被告の主張)記載のとおり、本件受贈益は、破産会社に帰属するものであるから、本件受贈益に係る資金で払い込まれた本件名義株は、破産会社に帰属するものであり、その名義人には帰属し得ないものである。

(三) 本件有価証券売却益に係る売買代金の入金関係やその使途についてみると、右売買代金は売却株式の名義人とは全く関係のない広川口座に入金されているほか、富士銀行上福岡支店の深谷浩名義の預金口座(以下「深谷口座」という。)に入金された資金も同人との関係が認め難い大和銀行川越支店の広川守名義の口座に移動されたり、預り金として破産会社に入金されているなど、右売買代金に係る資金の動きは、その代金が各名義人に帰属するとは認めようのないものであり、その使途も、破産会社の貸出資金や架空売上げの決済金など、そのほとんどが破産会社の資金として用いられたものである。また、右各預金口座に係る通帳等は破産会社の財務部で管理していたものである。

かかる事実に照らせば、右株式売買代金が破産会社に帰属するものであることは明らかであって、売却された株式の名義人に帰属するものとは到底認められない。

(四) 原告は、本件有価証券売却益の発生原因とされる売買の対象となった株式の名義人である須藤菊雄らは、本件名義株のほかに名実ともに同人らが所有する株式(以下「実株」という。)を保有しており、右売買の対象となった株式には本件名義人らの実株が含まれていた可能性は否定できない旨主張し、その証左として、須藤菊雄らが、これらの売却した株式は同人らの実株であり、その売買代金を破産会社あるいは破産会社と同じく破産宣告を受けた日産機材に預けていたと主張し、各破産手続において債権届出をしていることを挙げている。

しかしながら、原告は、破産手続において、右の届出債権を否認しており、原告の右主張は、右破産手続における原告の対応と矛盾するものである。

いずれにしても、破産会社の専務取締役であった三浦磯夫(以下「三浦専務」という。)は、東京国税局査察部による調査の際に、平成二年七月二七日の破産会社の株式の店頭公開に当たり、廣川昌の指示に基づき、冷やし玉として、本件名義株の中から須藤菊雄ほか三名の株式一五万二〇〇〇株を売却した旨、また、同年一一月に売却した深谷浩名義の株式は、同人名義の本件名義株である旨述べており、原告の右主張は明らかに事実に反するものである。

また、仮に売却された株式に実株が混入していたとしても、税法においては納税者が現に経済的利益を享受していると認めるに足る事実があれば、原則として所得は発生するものと考えるべきところ、前記(三)記載のとおり、本件名義株の売却による収入は、破産会社が現実に支配管理し、破産会社の資金として使用しているのであるから、右売却による利益は、破産会社の収益(所得)となることに変わりはないのである。

(原告の主張)

被告は、本件有価証券売却益の発生原因とされる売買において売却された株式は、破産会社が昭和六三年七月二日の増資前から所有していた自己株式一万七四三二株及び右増資によって取得した二万一〇四八株である旨主張するが、何らの証拠もない。かえって、以下の点にかんがみれば、売却された株式が破産会社に帰属しないことは明らかである。

(一) 昭和六三年七月二日付け、同月二〇日付け及び同年一一月一四日付けの各増資において虚無人や第三者名義を冒用して引き受けられた株式の払込金は、三浦仮払金として破産会社から支出されたものであるが、三浦仮払金の清算は、その約四〇パーセントが本件一六口座にあった資金(その資金が破産会社に帰属するものでないことは、前記1(原告の主張)(二)、(三)記載のとおりである。)で賄われ、その余は廣川昌ほかの役員の銀行からの借入金、従業員からの拠出金で賄われているものである。

かかる経緯に照らせば、第一回ないし第三回の増資により発行された本件増資名義株は、三浦仮払金の清算がなされるまでの間は引受担保責任を負うこととなる取締役全員の共有と認められるが、その清算以後は、その清算金を拠出した者が実際に所有することなるものと解するのが相当である。商法二〇一条一項、二八〇条の一三の規定に照らし、破産会社が右株式の所有者とならないことは明らかである。

したがって、本件増資名義株は、遅くとも、三浦仮払金の清算が完了した日の翌日である昭和六三年一二月一五日以降はその清算金を拠出した者、すなわち、日産株やリース株を破産会社に譲渡した旧株主や、破産会社の新株を取得するために破産会社に資金を預けた廣川昌その他の役員、従業員らの所有となったとみるべきである。

(二) 原告は、本件有価証券売却益の発生原因とされている売買により売却された株式の帰属については、廣川昌が右売却による収入を自由に処分し、専ら同人がその利益を得ていることなどからみて、第一次的には、右株式は廣川昌個人の所有に属するものであったと主張するものであるが、仮にそうでないとしても、右株式が本件名義株であったとする確たる証拠はない。

すなわち、平成二年七月二七日には須藤菊雄名義の一万株、深谷浩名義の一万七〇〇〇株、佐藤明夫名義の九万五〇〇〇株、岡田恒雄名義の三万株の合計一五万二〇〇〇株の破産会社の株式が売却され、平成二年一一月には深谷浩名義の破産会社の株式六万一〇〇〇株が売却されているところ、須藤菊雄ほか三名は、本件名義株のほかに実株を有していたものであるから、右の売却された株式に同人らの実株が含まれていた可能性は否定できない。現に須藤菊雄ほか三名は、これらの売却対象となった株式は同人らの実株であり、その売買代金を破産会社あるいは破産会社と同じく破産宣告を受けた日産機材に預けていたと主張し、各破産手続において債権届出をしているところである。

第三当裁判所の判断

一  本件の経緯

証拠(該当箇所に掲記するもの)及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない(なお、以下の認定事実中の廣川昌の種々の行為については、同人個人として行ったものか、あるいは破産会社の代表取締役として行ったものかが問題となるが、この点については後に検討する。)。

1  破産会社の組織等(甲五五、証人二宮伸夫、同三浦磯夫)

破産会社は、昭和三五年に設立された株式会社であり、建設機械の製造業を営んでいた。破産会社は、その後に設立された日産機材、リースサービスほか二社とともに、「ハニックスグループ」という企業グループを構成しており、破産会社の代表取締役であった廣川昌は、創業者として、グループ企業を統括する立場にあり、グループ企業内において絶対的な地位を占めていた。

2  破産会社の増資の経過

(一) 株式公開計画等(甲一七、一八、証人二宮伸夫、同三浦磯夫)

廣川昌は、破産会社の業績が延び会社規模が拡大したことを受けて、破産会社の株式を公開することを計画し、昭和六三年五月ないし六月ころ、その準備をするため、破産会社内に公開準備室を設置した。

破産会社は、株式の公開に向けて後述のとおり一連の増資を行ったが、これらの増資については、新株発行について取締役会の正式な議決はなく、新株発行の方法や割当先等を含め廣川昌がその一存で決定したものであった。

(二) 昭和六三年七月二日付けの増資(甲一七、一九の1、三〇の1ないし5、三一の1ないし6、三九、乙一、一四の1、証人二宮伸夫、同三浦磯夫、弁論の全趣旨)

(1) 破産会社は、昭和六三年七月二日、株主割当増資(所有株式一株について新株式二株を割り当てるもの)と称して、額面五〇〇円の株式二〇万株を額面価額で発行し、一億円の増資をして資本金を一億五〇〇〇万円とした(以下、これを「第一回増資」という。)。

(2) 第一回増資直前における破産会社の株主構成は、別表31の<1>欄記載のとおりであり、他方、第一回増資による株式の割当て及び引受けは、同表の<2>欄記載のとおりである。したがって、第一回増資は、実際には、株主割当による新株発行が行われたものではなかった。また、第一回増資において割当先とされたハンドーザー工業役員持株会(以下「役員持株会」という。)及び社員持株会は、当時、そのような団体は存在しておらず、両者は名目上の割当先にすぎなかった。

(3) 第一回増資に係る払込金一億円は、昭和六三年六月二九日、破産会社の資金を流用して払い込まれたものであり、破産会社の経理処理上は、三浦専務への仮払金(以下「三浦仮払金」という)として記帳された。

(三) 昭和六三年七月二〇日付けの増資(甲一七、一九の1、三二の1、2、三九、乙二、一四の1、証人二宮伸夫、同三浦磯夫、弁論の全趣旨)

(1) 破産会社は、昭和六三年七月二〇日、第三者割当増資として、額面五〇〇円の株式一二万株を発行価額一株一万四〇〇〇円で発行し、八億四〇〇〇万円の増資をして資本金を九億九〇〇〇万円とした(払込金のうち八億四〇〇〇万円は資本準備金とした。以下、この増資を「第二回増資」という。)

(2) 第二回増資の割当て及び引受けは、別表31の<3>欄記載のとおりであり、右増資において、社員持株会に対し一五〇〇株が割り当てられているが、第一回増資と同様に、社員持株会は名目上の割当先にすぎなかった。

(3) 第二回増資に係る社員持株会の払込金二一〇〇万円は、昭和六三年七月一八日、破産会社の資金をもって払い込まれたものであり、破産会社の経理処理上は、第一回増資の場合と同様に、三浦仮払金として記帳された。

(四) 昭和六三年一一月一四日付けの増資(甲一七、一九の1、三三の1ないし3、三四の1ないし3、三九、乙三、一四の1、証人二宮伸夫、同三浦磯夫、弁論の全趣旨)。

(1) 破産会社は、昭和六三年一一月一四日、第三者割当増資として、額面五〇〇円の株式三万株を発行価額一株一万四〇〇〇円で発行し、二億一〇〇〇万円を増資して資本金を一二億円とした(払込金のうち二億一〇〇〇万円は資本準備金とした。以下、この増資を「第三回増資」という。)。

(2) 第三回増資の割当て及び引受けは、別表31の<4>欄記載のとおりであり、右増資において、社員持株会に対し七四〇〇株が割り当てられているが、第一回及び第二回増資と同様に、社員持株会は名目上の割当先にすぎなかった。

(3) 第三回増資に係る払込金四億二〇〇〇万円は、昭和六三年六月二九日、破産会社の資金を流用して払い込まれたものであり、破産会社の経理処理上は、三浦仮払金として記帳された。

(五) その後の増資の経過(弁論の全趣旨)

(1) 破産会社は、昭和六三年一二月一六日、別表31の<5>欄記載のとおり、第三者割当てによる増資(以下「第四回増資」という。)により一〇万株を発行し、その資本金を二一億五〇〇〇万円とした。

なお、破産会社の昭和六三年一二月期末(昭和六三年一二月二〇日)現在の株主構成は、別表31の<6>欄記載のとおりである。

(2) 破産会社は、昭和六三年七月二〇日付けで、富士銀キャピタル株式会社ほか二社を引受人として新株引受権付社債九億八〇〇〇万円(新株発行数七万株、行使価格一株一万四〇〇〇円)を発行し、廣川昌は、右三社から新株引受権六万三〇〇〇株分を譲り受けていた。そして、右三社及び廣川昌は、平成元年一二月四日、右新株引受権を行使し、これにより破産会社の資本金は二六億四〇〇〇万円となった。

(3) 破産会社は、平成二年二月一五日、三割の無償増資を行い、これにより同社の発行済株式総数は八〇万六〇〇〇株となった。

(4) 破産会社は、平成二年四月二四日、株式の額面を五〇〇円から五〇円とする株式分割を行い、同社の発行済株式総数は八〇六万株となった。

(5) 破産会社は、平成二年七月二七日、同社の株式を店頭登録し、一般公募により額面五〇円の株式二五〇万株を発行価額一株六四五〇円で発行した。

3  関係会社の株式の買受け(甲一七、三五及び三六の各1ないし3、三七の1ないし4、三八の1、2、三九、乙六、一四の1、3、一八の1ないし4、二一の1、二八の1ないし4、二九、三〇の1、2、証人二宮伸夫、同三浦磯夫、弁論の全趣旨)

破産会社は、平成二年に株式を公開することを目論んでいたところ、昭和六三年一二月期において、前記2(二)ないし(四)記載の多額の三浦仮払金を繰り越すことは株式公開基準に照らして好ましくなかったことから、決算期を迎える前にこれを清算する必要に迫られていた。他方、破産会社は、株式を公開するためには関係会社である日産機材及びリースサービスの二社を破産会社の一〇〇パーセント子会社とする必要があった。

そこで、廣川昌は、破産会社に日産機材及びリースサービスの株主から全株式を買い受けさせ、売買代金の名目で破産会社から支出した資金を三浦仮払金の清算金に充てることを企て、次のとおり、日産株及びリース株の買受けを実行した。なお、廣川昌は、日産株ないしはリース株を所有していたハニックスグループの役員や従業員からその株式を買い受けるに当たっては、これらの株式を公開の予定されていた破産会社の株式に振り替える旨説明していた。

(一) 昭和六三年四月当時、日産機材の株主構成は、別表32の<1>欄記載のとおりであったが、廣川昌は、同表の<2>欄記載のとおり、安田四郎ほか二〇名の従業員が、その所有する日産株を向山文夫、上野英士郎、北村強助、塚田繁、大竹文雄の五名の従業員に相対取引により譲渡したことにして、日産機材の株主を全部で一五名とした。

なお、右の株式譲渡については、昭和六三年四月二七日付けで有価証券売買約定書が作成されているが、右約定書が実際に作成されたのは、その日付よりも相当後になってからである。

(二) 昭和六三年四月当時、リースサービスの株主構成は、別表33の<1>欄記載のとおりであったが、廣川昌は、同表の<2>欄記載のとおり、浅沼暉育ほか一一名の従業員が、その所有するリース株を山口剛及び田中裕の二名の従業員に相対取引により譲渡したことにして、リースサービスの従業員株主の集約を図った。

なお、右の株式譲渡については、昭和六三年四月二七日付けで有価証券売買約定書が作成されているが、右約定書が実際に作成されたのは、その日付よりも相当後になってからである。

また、廣川昌は、別表33の<2>欄記載のとおり、ハニックスグループ外の長野工業株式会社ほか五社の所有していたリース株をその額面価額である一株五〇〇円で吉田祐二及び矢島敏三の二名の従業員に取得させた。なお、吉田祐二らが右の五社からリース株を買い受けるに当たっては、その交渉は、三浦専務らが担当し、その売買代金は、リースサービスから支出された。

(三) 廣川昌は、右(一)、(二)記載のとおり株主を集約する作業を行うのと並行して、日産株及びリース株の買受けの準備作業として、昭和六三年一〇月、税理士事務所に依頼して右各株式の価格の評価を行わせ、日産株については一株三四〇〇円、リース株については一株一八〇〇円とその時価を算定した。

(四) 破産会社は、昭和六三年一一月一〇日、日産機材及びリースサービスの全株主から両社の株式を買い受けた。

破産会社は、同日、日産株及びリース株の売買代金名目で、別表34記載のとおり、その時価、すなわち、日産株については一株三四〇〇円、リース株については一株一八〇〇円で計算した金員を富士銀行上福岡支店の一三口座(合計二億一三七六万〇八〇〇円)及び協和銀行上福岡支店の七口座(合計一億七九九九万八四〇〇円)に振り込み、その旨破産会社の帳簿に記載した。このほか、破産会社は、山崎文子(廣川昌の妻)から買い受けたリース株一八七〇株の代金の支払のため、同女に三三六万六〇〇〇円の小切手を振り出し、右小切手は、同月一五日、破産会社の富士銀行上福岡支店の当座預金から引き落とされた。

なお、別表34の順号1ないし11及び14ないし19記載の旧株主名義の預金口座(このうち同表34の順号1記載の預金口座を除くものが、本件一六口座である。)は、当座破産会社の財務部の課長の職にあった二宮伸夫(同人は、平成二年から財務部次長に昇格しているが、右昇格の前後を問わず、以下「二宮次長」という。)が、三浦専務の指示を受け、同月九日、破産会社の資産により一〇〇〇円ずつ預金をして開設したものであり、その通帳や印鑑は破産会社において管理していたものである。

4  三浦仮払金の清算(甲一七、三九、乙一四の1、証人二宮伸夫、同三浦磯夫、弁論の全趣旨)

(一) 二宮次長は、三浦専務の指示により、別表34の「三浦仮払金清算経過」欄記載のとおり、同表の順号2ないし11及び14ないし19記載の本件一六口座から合計二億一九五三万六七〇〇円の預金を引き出して、これを破産会社の預金口座に振り込み、第一回ないし第三回増資の際に支出された三浦仮払金の清算に充てた。右預金の引出しは、各預金の名義人である旧株主の個別の了承を得ることなく、破産会社側において一方的に行ったものである。

なお、別表34の順号14の広川守名義の口座(広川口座)に入金された預金で、三浦仮払金の清算に充てられなかった残金のうち一一九八万円については、廣川昌が以前に私的に流用してしまった破産会社所有の有価証券(ワリノー)の穴埋めとして、昭和六三年一二月二〇日、三浦専務の指示を受けた二宮次長がこれを引き出し、破産会社の預金口座に振り込んでいる。

(二) 右(一)記載のとおり、三浦仮払金五億四一〇〇万円のうち二億一九五三万六七〇〇円が旧株主に対する売買代金として支出した資金により清算されたが、その余の残金については、廣川昌の銀行からの借入金、その他の各役員個人の銀行からの借入金、廣川昌の破産会社に対する日産株の売却代金、増資資金名目での従業員からの預り金その他により清算された。

5  名義株の創出時(甲一八、三九、乙四の1ないし7、一四の1、二六の1、6、二七の1、二九、証人二宮伸夫、弁論の全趣旨)

(一) 破産会社は、昭和六三年五月二五日ころ、自己株式一万七四三二株を別表3記載の譲受人に売却し、同年一一月一一日に右売買代金合計四三〇三万円が大和銀行川越支店の破産会社の当座預金に入金されたものとして経理処理を行っていたが、右の株式売買は、破産会社が自己株式を簿外で所有する目的で仮装された実態のない取引であった。

(二) 前記2(二)ないし(四)記載のとおり、破産会社は、第一回ないし第三回の増資において、役員持株会及び社員持株会という名目上の割当先に株式を割り当てていたが、廣川昌は、平成元年一月以降、これらの名目上の割当先に割り当てられた株式と右(一)記載の簿外で所有する自己株式について、自らの判断で、役員及び従業員らに対する株式の割振りを別表31の<6>欄記載のとおり決定した。その際、廣川昌は、役員に割り振った株式のうち、別表31の<7>欄記載の株式については、形式上役員の名義とするものの、実際は当該役員に帰属しない名義株(本件名義株)として割振りを行った。役員及び従業員らに対して割り振った株式については、役員及び従業員らが従前有していた日産株やリース株の株数及び新たに割り振られた破産会社の株数等に応じて清算が行われたが、本件名義株については、かかる清算は行われていない。

なお、本件名義株については、広川守ほか六名の役員から破産会社に対し、各役員は単に名義を貸したにすぎず、真正の保有者ではない旨を確認する昭和六三年一二月二〇日付けの念証が差し入れられているが、右各念証が実際に作成されたのは右日付よりも相当後になってからである。

また、廣川昌は、前記のとおり役員及び従業員に対し破産会社の株式の割振りをしたものの、役員及び従業員らに対しては株券の引渡しはせずに、自らこれを保管し、役員及び従業員らに対し株式の自由な処分は許さなかった。

(三) 右の経過により三万八四八〇株の本件名義株が生じたが、平成二年二月一五日付けの三割の無償増資及び同年四月二四日付けの株式分割により、本件名義株の株数は五〇万〇二四〇株となった。

6  本件名義株の売却(甲一八、乙五、六、二一の1、二三の1、3、二四、二五、二六の1、4、二七の1、三一の1、4、三二の1、2、弁論の全趣旨)

(一) 平成二年七月二七日、破産会社の株式が店頭登録されたが、廣川昌の指示を受けた三浦専務は、いわゆる冷やし玉として、本件名義株のうち、須藤菊雄名義の一万株、深谷浩名義の一万七〇〇〇株、佐藤明夫名義の九万五〇〇〇株、岡田恒雄名義の三万株の合計一五万二〇〇〇株の破産会社の株式を一株一万六六〇〇円、合計二五億二三二〇万円で売却した。

二宮次長は、同年八月一日、三浦専務から、右の売買代金として同人が受け取った額面合計二五億一一二三万五七五一円の預金小切手四枚を渡され、同人の指示に基づき、これを本件一六口座の一つである広川口座に入金した。

(二) 破産会社は、平成二年一一月七日、大和銀行に対し、破産会社が同社の元従業員安田四郎から買い受けた自己株式六万一〇〇〇株を一株一万二二〇〇円、合計七億四四二〇万円で売却した。しかし、右株式売却が安田四郎名義で行われたことから、同人からクレームが付き、廣川昌は、右株式の売買を取り消し、同月一三日、それに替えて、本件名義株のうち深谷浩名義の株式六万一〇〇〇株を売却することにした。なお、右深谷浩名義の株式の売買については、安田四郎名義の株式が売却されたのと同じ同月七日付けでされたものとして取り扱うこととされた。

そして、同月一三日、右売買代金から有価証券取引税等を控除した七億四〇六四万九四五四円が、野村證券から本件一六口座の一つである富士銀行上福岡支店の深谷浩名義の普通預金口座(深谷口座)に振り込まれた。

7  株式売買代金の使途(甲一八、三九ないし五四、乙六、八、一〇、一四の1、2、二〇の1ないし9、証人二宮伸夫、弁論の全趣旨)

(一) 前記6(一)記載のとおり、広川口座に入金された株式売却代金二五億一一二三万五七五一円の使途は、次のとおりである。

(1) 平成二年八月一〇日 二九四二万四四三六円

右は、廣川昌が、同人が買った株式の代金の支払のため、二宮次長に指示をして、野村證券に送金させた二九四二万三七一五円と振込手数料七二一円との合計額である。

(2) 平成二年八月一七日 三億〇七二一円

右は、廣川昌が、二宮次長に指示をして、廣川昌が事実上支配し同人の親族が役員となっている株式会社マストに送金させた三億円と振込手数料七二一円との合計額である。

(3) 平成二年八月一七日 一二億円

右は、廣川昌が、二宮次長に指示して、普通預金から出金させ、広川口座のある協和銀行上福岡支店において広川守名義で七億円及び五億円の二口の定期預金にさせたものである。

廣川昌は、同年九月二〇日、右各定期預金を解約し、そのうち一一億三八五六万円を同人が平成元年一二月四日に新株引受権を行使した際に払込資金として借り入れた借入金の返済に充て、その残金六七八四万円を広川口座に戻している。

(4) 平成二年八月三〇日 三億〇七二一円

右は、廣川昌が、二宮次長に指示をして、廣川昌が事実上支配し同人の親族が役員となっている株式会社マストに送金させた三億円と振込手数料七二一円との合計額である。

(5) 平成二年八月三一日 二億八八〇〇万五七六八円

右は、廣川昌が、広川守ほか五名の役員に対し、同人ら所有の破産会社の株式を担保として合計三億円を貸し付けることとし、三浦専務を通じてその指示を受けた二宮次長が、四パーセントの利息を天引きした上右各役員の預金口座に振り込んだ合計二億八八〇〇万円の貸付金と振込手数料五七六八円との合計額である。

(6) 平成二年九月五日 八四四八万一九五七円

右は、廣川昌が、田中裕ほか二名の従業員に対し、同人ら所有の破産会社の株式を担保として合計八八〇〇万円を貸し付けることとし、三浦専務を通じてその指示を受けた二宮次長が、四パーセントの利息を天引きした上右各従業員の預金口座に振り込んだ合計八四四八万円の貸付金と振込手数料一九五七円との合計額である。

(7) 平成二年九月六日 五五〇〇万一九五七円

右は、廣川昌が、向山文夫ほか一名の従業員に同人ら所有の破産会社の株式を担保として合計五五〇〇万円を貸し付けることとし、その指示を受けた二宮次長が、広川口座から引き出した五五〇〇万円から四パーセントの利息を天引きした上右各従業員の預金口座に振り込んだ合計五二八〇万円の貸付金と振込手数料一九五七円との合計額である。

なお、二宮次長は、右利息に当たる二二〇万円をそのまま広川口座に戻している。

(8) 平成二年九月二六日 四八〇〇万円

右は、廣川昌が、同人の富士銀行上福岡支店の普通預金口座に振り込んだ四七九九万九二七九円と振込手数料七二一円との合計額である。

なお、右金員の使途は不明である。

(9) 平成二年一一月二八日 三七〇八万六六九五円

右は、三浦専務の指示を受けた二宮次長が、額面三七〇八万一八一〇円の預金小切手を作成するために出金したものである。

なお、右小切手は、取引先である株式会社リョウセイから売掛金を回収したとの名目で破産会社に入金されている。

(10) 平成二年一二月一四日 八五〇万一五四五円

右は、三浦専務の指示を受けた二宮次長が、額面二〇〇万円、同一四〇万円及び同五一〇万円の預金小切手三枚を作成するために出金したものである。

なお、右各小切手は、取引先である諸橋工機株式会社から売掛金を回収したとの名目で破産会社に入金されている。

(11) 平成二年一二月一九日 一億四四五一万三六四九円

右は、深谷浩名義で破産会社の株式を六万一〇〇〇株購入する代金の支払に充てるために、廣川昌の指示を受けた二宮次長が出金したものである。

なお、右の株式購入は、前記6(二)記載のとおり、元従業員の安田四郎名義の株式に替えて深谷浩名義の破産会社の株式六万一〇〇〇株を売却したことを受けて、同人名義の株式を同数買い戻す目的で行われたものである。

(二) 前記6(二)記載のとおり、深谷口座に入金された株式売買代金七億四〇六四万〇四五四円については、その後、三浦専務がこの預金を引き出し、預金協力として大和銀行川越支店の広川守名義の口座に一か月間預け、その後、前記(一)(11)記載のとおり、深谷浩名義で破産会社の株式を購入する際の代金の一部等に充てられている。

二  昭和六三年一二月期更正処分及び加算税賦課決定について

1  受贈益除外額について

(一) 前記一3(四)で認定したとおり、破産会社は、昭和六三年一一月一〇日、旧株主から日産株及びリース株を買い受け、その売買代金名目で、日産株については一株三四〇〇円、リース株については一株一八〇〇円で計算した金員を旧株主名義の一六口座に振り込み、その旨帳簿に記載している。

しかしながら、証拠(乙一三、一四の1)によれば、社員持株会の設立及び日産株及びリース株の譲渡について告知することを内容とする同持株会理事長作成名義の昭和六三年六月一三日付け文書(乙一三)には、従業員が所有している日産株及びリース株については、その額面価額である一株五〇〇円でこれを買い取り、社員持株会を通じて優先的に破産会社の株式を割り当てる旨記載されていること、そして、実際に、破産会社は、旧株主を含むハニックスグループの役員及び従業員が所有していた日産株及びリース株を破産会社の株式に振り替える際には、日産株及びリース株についてはその額面である一株五〇〇円で譲渡されたものとして清算を行っていることが認められ、かかる事実に照らせば、破産会社としては、旧株主から日産株及びリース株を、その額面価額である一株五〇〇円で買い受ける意思であったことは明らかである。

そして、旧株主に対する売買代金が振り込まれた本件一六口座は、三浦専務の指示を受けた二宮次長が破産会社の資金により開設したものであり、その通帳や印鑑は破産会社において管理していたこと、破産会社は、本件一六口座の名義人である旧株主の個別の了承を得ることなく、右各預金を引き出し、破産会社の増資の際の払込金とするため支出された三浦仮払金の清算に充てていることは、前記一の3(四)及び4(一)で認定したとおりであって、右事実によれば、本件一六口座は、旧株主の名義とはなっているものの、実際には破産会社が支配・管理していた口座であると認められる。

そうであるとすると、破産会社は、日産株及びリース株の売買代金名目で、その時価、すなわち、日産株については一株三四〇〇円で、リース株については一株一八〇〇円で計算した金員を本件一六口座に振り込んでいるものの、実際には、その額面価額である一株五〇〇円で旧株主から日産株及びリース株を買い受けたと認めるのが相当であり、したがって、破産会社は、右の株式の買い受けにより、前記第二の二(本件各更正処分の根拠等)1(算定根拠の詳細)(二)(2)記載のとおり、一億九一一一万一五〇〇円の本件受贈益を得たものというべきである。

(二) この点に関し、原告は、本件一六口座は、破産会社が管理していたものではなく、破産会社の代表者であった廣川昌が個人として管理していたものである旨主張するが、前示のとおり、本件一六口座は、三浦専務の指示を受けた二宮次長が破産会社の資金により開設したものであり、その通帳や印鑑も破産会社で管理していたものであって、これによれば、右預金口座は、破産会社が支配・管理していたものと認めるのが相当である。原告の右主張は採用することができない。

さらに、原告は、本件一六口座に入金されていた資金は旧株主からの預り金にすぎず、破産会社の所得となるものではない旨主張する。しかしながら、前示のとおり、破産会社は、旧株主から、その額面価額である一株五〇〇円で日産株及びリース株を取得したものであり、本件一六口座に入金された資金のうち一株五〇〇円で計算した金員に相当する部分は、旧株主からの預り金としての性格を有するものということができるとしても、それを超える部分について、これを旧株主からの預り金とみる余地はないというべきである。原告の右主張は採用することができない。

(三) したがって、破産会社がした昭和六三年一二月期の確定申告において計上されていない本件受贈益一億九一一一万一五〇〇円は、受贈益除外額として、同期の申告所得金額に加算されるべきである。

2  補助金認容額について

証拠(乙一四の1、一五ないし一七、二一の1)及び弁論の全趣旨によれば、破産会社は、第二回及び第三回増資の際に、新株の払込金額を一株当たり一万四〇〇〇円としたが、実際の払込金額を役員等については一株当たり一万二〇〇〇円、従業員等については一株当たり一万円とし、その差額、すなわち、役員等については二〇〇〇円、従業員等については四〇〇〇円を新株取得のための補助金として支給したこと、右補助金の支給額の明細は、別表2記載のとおりであり、補助金支給総額は四九八〇万円であること、破産会社は、昭和六三年一二月期の確定申告において、右補助金支給額を損金として計上していないことが認められる。

そうすると、右補助金支給総額四九八〇万円については、補助金認容額として、昭和六三年一二月期の申告所得金額から減算するのが相当である。

3  賞与(給与)認容額について

弁論の全趣旨によれば、破産会社は、昭和六三年一二月一四日、須藤菊雄に対して、簿外で二二七万二〇〇〇円の給与を支給したこと、破産会社は、昭和六三年一二月期の確定申告において、右給与を損金として計上していないことが認められる。

そうすると、右給与支給額二二七万二〇〇〇円については、給与認容額として、昭和六三年一二月期の申告所得金額から減算するのが相当である。

4  雑収入(自己株式売却益)否認額について

破産会社が、昭和六三年五月二五日ころ、自己株式一万七四三二株を別表3記載の譲受人に売却し、同年一一月一一日、右売却代金合計額四三〇四万円が大和銀行川越支店の破産会社名義の当座預金に入金されたとして、昭和六三年一二月期の確定申告において、右売買代金合計額と右自己株式の帳簿価額合計額八七一万六〇〇〇円(一株当たり五〇〇円)との差額三四三一万四〇〇〇円を雑収入として申告したことは当事者間に争いがないところ、前記一5(一)で認定したとおり、右の株式売却は、破産会社が自己株式を簿外で所有する目的で仮装された実体のない取引であって、破産会社が右自己株式を譲渡した事実も、右譲受人らが破産会社に右株式売買代金を支払った事実も認められないから、破産会社に右雑収入が生じたものとは認められない。

したがって、右雑収入(自己株式売却益)三四三一万四〇〇〇円は、雑収入否認額として、昭和六三年一二月期の申告所得金額から減算されるべきである。

5  昭和六三年一二月期更正処分の適否について

破産会社の昭和六三年一二月期の申告所得金額が一六億四一二八万四五〇四円であることは当事者間に争いがないところ、前記1ないし4記載のとおり、加算・減算を行うと、破産会社の同期の所得金額は一七億四六〇一万〇〇〇四円となる。

したがって、右金額と同額を破産会社の所得金額とする昭和六三年一二月期更正処分は適法というべきである。

6  昭和六三年一二月期加算税賦課決定の適否について

昭和六三年一二月期更正処分に基づき納付すべき税額は、別表23記載のとおり、四三九八万四九〇〇円となるところ、前記1で認定、説示したとおり、破産会社は、旧株主から日産株及びリース株を一株当たり五〇〇円で取得したにもかかわらず、日産株を一株当たり三四〇〇円、リース株を一株当たり一八〇〇円で取得したかのように、帳簿に虚偽の記載をし、その差額を本件簿外預金とするなどして代金の支払事実を仮装・隠ぺいし、その仮装・隠ぺいしたところに基づいて申告を行ったものであるから、右の納付すべき税額のすべてが重課対象増加税額となるものである。

そこで、通則法六八条一項により、右納付すべき税額に一〇〇分の三五を乗じて賦課すべき重加算税額を計算すると、その税額は一五三九万三〇〇〇円となる。

したがって、右金額と同額の重加算税を賦課した昭和六三年一二月期加算税賦課決定は適法というべきである。

三  平成元年一二月期更正処分及び加算税賦課決定について

1  新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額について

破産会社が、平成元年一二月期の確定申告において、平成元年九月一八日に本件土地を二〇八三万二〇〇〇円で取得し、本件土地が平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二に規定する新規取得土地等に当たるとして、同条に規定する負債の利子の損金不算入額を三一万二四八〇円と算定して申告したことは、当事者間に争いがないところ、証拠(乙一四の1、二一の1)によれば、破産会社は、本件土地の取得に当たり、その代金として右二〇八三万二〇〇〇円のほかに、破産会社の簿外資金から七〇〇万円を売主に支払っていたことが認められる。

そうであるとすると、右七〇〇万円を平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二に規定する損金不算入額の計算の基礎とすべきところ、破産会社の申告に係る売買代金二〇八三万二〇〇〇円に右七〇〇万円を加算した二七八三万二〇〇〇円を本件土地の取得価額として右損金不算入額を計算し直すと、別表6記載のとおり、右損金不算入額は四一万七四八〇円となる。

したがって、右損金不算入額四一万七四八〇円と破産会社の申告に係る損金不算入額三一万二四八〇円との差額一〇万五〇〇〇円は、平成元年一二月期の申告所得金額に加算されるべきである。

2  受取利息除外額について

前記二1(一)で認定したとおり、本件一六口座は、破産会社が現実に支配・管理する預金口座であるところ、弁論の全趣旨によれば、本件一六口座には、平成元年一二月期の期間中において、別表7の(1)及び(2)記載のとおり、受取利息合計三万四七七〇円(ただし、受取利息に係る所得税一五パーセント及び道府県民税五パーセントの各源泉徴収税額を差し引いた後の金額)が入金されていること、破産会社は、平成元年一二月期の確定申告において、右受取利息三万四七七〇円及びこれに係る道府県民税の利子割の額二一六四円の合計三万六九三四円を破産会社の所得として計上していないことが認められる。

しかして、右受取利息三万四七七〇円及びこれに係る道府県民税の利子割の額二一六四円(法人税法三八条二項三号参照)の合計三万六九三四円については、本件一六口座を現実に支配・管理していた破産会社の所得と認めるのが相当であるから、右金額は、受取利息除外額として、平成元年一二月期の申告所得金額に加算されるべきである。

3  雑費認容額について

乙一四の1及び弁論の全趣旨によれば、破産会社は、平成元年一二月期において、破産会社の従業員であった小田切一元が破産会社を退職し、同人が所有していた破産会社の株式を関東建機株式会社及び社員持株会に譲渡するに当たり、同人が破産会社の株式を取得するに際して支払った銀行借入金の利息相当額三九万七八〇〇円を簿外で負担したこと、しかし、破産会社は、平成元年一二月期の確定申告において、右支払金額を破産会社の損金の額に算入しなかったことが認められる。

そうすると、右支払額三九万七八〇〇円については、雑費認容額として、平成元年一二月期の申告所得金額から減算するのが相当である。

4  事業税認定損の額について

昭和六三年一二月期更正処分の結果、別表8記載のとおり、平成元年一二月期に納付すべき事業税額が一二五六万七〇〇〇円増加するので、右金額は、事業税認定損の額として、破産会社の同期の申告所得金額から減算されるべきである。

5  貸倒引当金繰入限度超過額の過大計上額について

破産会社が、平成元年一二月期の確定申告において、同期の貸倒引当金として一億二〇〇〇万円を損金経理により繰り入れたが、右繰入額のうちに限度超過額が七六四万一〇三〇円あるとして、同超過額を益金の額に算入して申告していたことは、当事者間に争いがないところ、弁論の全趣旨によれば、破産会社は、平成元年一二月二〇日現在、右繰入額以外に、社員持株会に対して簿外の立替金(貸付金)六三万二〇〇〇円を有していたことが認められる。そして、右立替金は、平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法五二条一項に規定する貸金の額に当たると認められるから、右立替金の額を破産会社の申告に係る貸金の額に加えた上で、平成一〇年政令第一〇五号による改正前の法人税法施行令九七条に基づいて貸倒引当金の繰入限度額を計算し直すと、別表9記載のとおり、繰入限度額は破産会社の計算額に比し五〇〇六円増加し、破産会社の申告に係る右限度超過額は、五〇〇六円過大に計上されていたことになる。

したがって、右五〇〇六円は、貸倒引当金繰入限度超過額の過大計上額として、平成元年一二月期の申告所得金額から減算されるべきである。

6  その余の加算項目について

前記1、2記載の加算項目を除く平成元年一二月期の加算項目、すなわち、<1>交際費等損金不算入額二二一万八五〇九円、<2>支払保険料過大計上額九六七万三六三〇円、<3>雑損失過大計上額四九二万〇七五〇円については、その基礎となる事実について、当事者間に争いがないから、右各金額は、平成元年一二月期の申告所得金額に加算されるべきである。

7  平成元年一二月期更正処分の適否について

破産会社の平成元年一二月期の申告所得金額が二三億三五一四万〇一六九円であることは、当事者間に争いがないところ、前記1ないし6記載のとおり、加算・減算を行うと、破産会社の同期の所得金額は二三億三九一二万五一八六円となる。

したがって、右金額と同額を破産会社の所得金額とする平成元年一二月期更正処分は適法というべきである。

8  平成元年一二月期加算税賦課決定の適否について

(一) 平成元年一二月期更正処分に基づき納付すべき税額は、別表24記載のとおり、一六七万三七〇〇円となるところ、右税額中に重課対象増加税額が存在せず、そのすべてが過少対象増加税額となることは被告の自認するところである。

そこで、通則法六五条一項により、右納付すべき税額に一〇〇分の一〇を乗じて賦課すべき過少申告加算税額を計算すると、その税額は別表29記載のとおり、一六万七〇〇〇円となるところ、平成元年一二月期加算税賦課決定は、過少申告加算税額を一六万一〇〇〇円とし、重加算税額を一万七五〇〇円として加算税を賦課しているものである。

(二) ところで、通則法六五条の規定による過少申告加算税と同法六八条一項の規定による重加算税とは、ともに申告納税方式による国税について過少な申告を行った納税者に対する行政上の制裁として賦課されるものであって、同一の修正申告又は更正に係るものである限り、その賦課及び税額計算の基礎を同じくし、ただ、後者の重加算税は、前者の過少申告加算税の賦課要件に該当することに加えて、当該納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出するという不正手段を用いたとの特別の事由が存する場合に、当該基礎となる税額に対し、過少申告加算税におけるよりも重い一定比率を乗じて得られる金額の制裁を課することとしたものと考えられるから、両者は相互に無関係な別個独立の処分ではなく、重加算税の賦課は、過少申告加算税として賦課されるべき一定の税額に前記加重額に当たる一定の金額を加えた額の税を賦課する処分として、右過少申告加算税の賦課に相当する部分をその中に含んでいるものと解するのが相当である(最高裁昭和五六年(行ツ)第一三九号同五八年一〇月二七日第一小法廷判決・民集三七巻八号一一九六頁)。

したがって、通則法六八条一項、同法施行令二八条一項により、加算税の税額計算の基礎となるべき税額のうち、隠ぺい又は仮装されていない事実に基づくことが明らかである税額(過少対象増加税額)につき過少申告加算税が課され、その余の税額(重課対象増加税額)につき重加算税が課される場合には、過少申告加算税の賦課決定と重加算税の賦課決定の二個の処分がされるものとみるべきではなく、一個の加算税賦課決定がされるものと解すべきである。

そうであるとすれば、更正処分に基づき納付すべき税額中に重課対象増加税額と過少対象増加税額があるものとして重加算税及び過少申告加算税を貸した加算税賦課決定の適否が訴訟において争われている場合には、その賦課された重加算税額及び過少申告加算税額の総額が、当該更正処分に係る加算税として本来課されるべき税額を超えているか否かを審理し、右総額が本来課されるへき加算税の税額を超えている場合には、その超える税額部分を違法として取り消すのが相当である。

(三) これを平成元年一二月期加算税賦課決定についてみれば、前示のとおり、平成元年一二月期更正処分に係る加算税として本来課されるべき税額は一六万七〇〇〇円となるところ、平成元年一二月期加算税賦課決定は、過少申告加算税額一六万一〇〇〇円、重加算税額一万七五〇〇円の合計一七万八五〇〇円の加算税を賦課しているものであるから、右賦課決定のうち税額一六万七〇〇〇円を超える部分は違法として取り消されるべきものである。

四  平成二年一二月期更正処分及び加算税賦課決定について

1  有価証券売却益除外額について

(一) 前記一6で認定したとおり、平成二年七月二七日付け及び同年一一月七日付けで須藤菊雄ほか三名の名義の合計二一万三〇〇〇株の本件名義株(以下「本件売却名義株」という。)が売却されており、その売却による利益が本件有価証券売却益とされているものである。

この点に関し、原告は、須藤菊雄ほか三名は、本件名義株のほかに実株を保有しており、右の売却の対象となった株式には、同人らの実株が含まれていた可能性は否定できない旨主張するが、右株式売却の手続を行った三浦専務は、東京国税局査察部による調査の際に、平成二年七月二七日の破産会社の株式の店頭公開に当たり、廣川昌の指示に基づき、冷やし玉として、本件名義株の中から須藤菊夫ほか三名の株式一五万二〇〇〇株を売却した旨、また、同年一一月に売却した深谷浩名義の株式は、同人名義の本件名義株である旨述べており(乙三一の1)、本件において、右供述に基づく前記認定を左右するに足りる証拠はない。したがって、原告の右主張は採用することができない。

(二) そこで、本件売却名義株の帰属が問題となるところ、以下のとおり、本件売却名義株を含む本件名義株は破産会社に帰属し、破産会社が本件有価証券売却益を得たものと認めるのが相当である。

(1) 本件名義株が創設された経過及び本件名義株について各名義人である役員らの負担による清算が行われていないことは、前記一5で認定したとおりであるところ、本件名義株のうち、昭和六三年五月二五日ころに破産会社から別表3記載の譲受人に譲渡があったものと仮装された一万七四三二株(その後の無償増資及び株式分割により、その株数は、二二万六六一六株となったものである。)が破産会社に帰属することは明らかである。

(2) 本件名義株のうち本件増資名義株は、第一回ないし第三回増資の過程において、名目上の割当先であった役員持株会及び社員持株会に割り当てられた株式が源泉になっているものと認められるところ、別表31記載の破産会社における役員等の持株数の推移をみると、<1>本件名義株は、最終的にすべてハニックスグループの役員名義の株として割り振られており、社員持株会の持株の中には割り振られていないこと、<2>第一回増資において役員持株会に名目上割り当てられた株数は五万〇八六〇株であるところ、本件増資名義株を含め最終的にハニックスグループの役員名義の株として割り振られた本件名義株の株数は、三万八四八〇株であり、役員持株会に名目上割り当てられた株数を下回っていること、<3>他方、社員持株会は、第一回ないし第三回増資において合計四万七五二〇株を名目上割り当てられているところ、社員持株会は、昭和六三年一二月期末時点での株式の割振りにおいて六万六八三〇株を保有するものとされ、その割振りにより第一回ないし第三回増資における割当株数以上の株式を割り振られていること(昭和六三年一二月期末時点における社員持株会の保有株数と破産会社の個々の従業員が第一回増資前に所有していた株式の合計数の差は五万二一〇〇株である。)が認められる。

右の破産会社における役員等の持株数の推移に照らせば、本件増資名義株の源泉は、専ら、第一回増資において名目上役員持株会に割り当てられた五万〇八六〇株にあると認めるのが相当である。

(3) ところで、前記一の2(二)ないし(四)及び4(二)で認定したとおり、第一回増資において役員持株会に割り当てられた株式を含め第一回ないし第三回増資において発行された株式は、三浦仮払金という名目で破産会社から支出された資金によって払い込まれたものであり、また、三浦仮払金五億四一〇〇万円のうち二億一九五三万六七〇〇円は旧株主に対する売買代金として出金した資金により清算され、その余の残金については廣川昌の銀行からの借入金、その他の各役員個人の銀行からの借入金、廣川昌の破産会社に対する日産機材株の売却代金、増資資金名目での従業員からの預り金その他により清算されたものである。右のうち、役員及び従業員らの実質的な負担により清算された部分は、これらの者に破産会社の株式を実株として割り振ったことに伴う清算として行われたものとみるべきであり、他方、役員らの負担による清算が行われていない本件増資名義株(前記一5(二))は、本件受贈益を資金源として発生した株式とみるほかないものである。

しかして、前示のとおり、本件受贈益は破産会社に帰属するものであるから、これを資金源として発生した本件増資名義株は、破産会社に帰属するものというべきである。

(4) 前記一6及び7で認定した本件売却名義株の売買代金の入金関係や使途からみても、本件売却名義株が破産会社に帰属し、破産会社が本件有価証券売却益を得たものと認めるのが相当である。

すなわち、本件売却名義株の売買代金のうち、平成七年七月二七日付けの売買に係るものは、売却された株式の名義人とは全く関係のない、破産会社の支配・管理に係る広川口座に入金されており、同様に、同年一一月の売買に係る売買代金も破産会社の支配・管理に係る深谷口座に入金された後、三浦専務により引き出され、預金協力として大和銀行川越支店の広川守名義の預金口座に移動されているものである。

これらの売買代金の使途のうち、ハニックスグループの役員及び従業員らに対する貸付け、売掛金回収の外形を作出する目的での預金小切手作成のための支出並びに深谷浩名義での株式購入のための支出については、廣川昌がこれらの資金を個人的に費消したものではなく、同人が破産会社の代表取締役としてその使途を決定し、支出されたものと認めるべきものである。その余の使途については、廣川昌がこれらの資金を個人的に費消したものといわざるを得ない部分もあるが、これらは、ハニックスグルーフの創業者としてグループ企業内で絶対的な地位を占めていた廣川昌がその権限を濫用し、破産会社の資金を不正に領得したものとみるべきであって、廣川昌がこれらの資金を個人的に費消したという事実は、本件売却名義株が破産会社に帰属し、破産会社が本件有価証券売却益を得たとの認定を妨げるものではない。

(5) また、証拠(乙六、七、二一の1)及び弁論の全趣旨によれば、破産会社は、平成二年三月二〇日、平成元年一二月期に係る配当金として本件名義株三万八四八〇株分を含め一株当たり一〇〇円の配当金を支払い、本件名義株に係る配当金三〇七万八四〇〇円(ただし、所得税源泉徴収後の金額であり、その明細は別表11記載のとおりである。)について、いったん各名義人の預金口座に振り込んだ上で、同年四月一三日までにその全額を回収し、同日、破産会社の支配・管理に係る広川口座に入金して、破産会社の簿外資金としたことが認められ、かかる事実も、本件売却名義株を含む本件名義株が破産会社に帰属していたことの裏付けとなるものである。

(6) 原告は、三浦仮払金の名目で破産会社から支出された資金により払い込まれた本件増資名義株は、右仮払金の清算がなされるまでの間は引受担保責任を負うこととなる取締役全員の共有と認められるが、その清算以後は、その清算金を拠出した者が実際に所有することなるものと解するのが相当であり、商法二〇一条一項、二八〇条の一三の規定に照らし、破産会社が右株式の所有者とならないことは明らかである旨主張する。

もとより、株式会社が新株を発行する際に、自ら引受人となることが許されないことは当然のことであるが、法人税においては、資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、課税を行うものであり(法人税法一一条)、原告の指摘する商法の規定は、本件有価証券売却益が破産会社に帰属するものとして課税を行うことの妨げとなるものではない。したがって、原告の右主張は採用することができない。

(三) 次に本件売却名義株の売却による利益額についてみるに、弁論の全趣旨によれば、本件売却名義株の売却に係る取引税及び委託料は別表10記載のとおりであること、本件名義株のうち本件増資名義株を除く破産会社がもともと所有していた自己株式一万七四三二株の取得価額は、その額面価額である一株五〇〇円であることが認められる。また、本件増資名義株は、第一回増資において名目上役員持株会に割り当てられた五万〇八六〇株を源泉とするものと認められることは前示のとおりであり、したがって、その取得価額は、その発行価額である一株五〇〇円と認められる(前記一2(二)(1))。

そうすると、本件株式売却による売却益を算出するに当たっての取得原価の計算は、別表10の欄外の(注)記載のとおりとなるから、右株式売却による譲渡益は、同表記載のとおり、三二億四三八五万九六四二円と認められる。

(四) したがって、平成二年一二月期の確定申告において計上されていなかった右三二億四三八五万九六四二円は、有価証券売却益除外額として、同期の申告所得金額に加算されるべきである。

2  受取配当金除外額について

前記1(二)(5)の認定によれば、破産会社は、平成二年三月二〇日、平成元年一二月期に係る配当金として、本件名義株三万八四八〇株分を含め一株当たり一〇〇円の配当金を支払い、本件名義株に係る配当金三〇七万八四〇〇円(ただし、所得税源泉徴収後の金額であり、その明細は別表11記載のとおりである。)について、いったん各名義人の預金口座に振り込んだ上で、同年四月一三日までにその全額を回収し、同日、破産会社の支配・管理に係る広川口座に入金して、破産会社の簿外資金としたものと認められる。

ところで、法人税法二三条一項は、法人が受ける利益の配当の額の一〇〇分の八〇に相当する金額を益金の額に算入しない旨規定し、同条五項は、確定申告書に益金の額に算入されない配当の額及びその計算に関する明細の記載があることを同条一項の適用を受ける条件とした上で、益金の額に算入されない配当の額は、かかる明細に記載された当該金額を限度とする旨を明らかにしているところ、破産会社において、右の自己株式に係る配当について、平成二年一二月期の確定申告において、右の所要の記載をしたことは認められない。

したがって、右配当金額三〇七万八四〇〇円は、受取利息申告除外額として、平成二年一二月期の申告所得金額に加算されるべきである。

3  受取利息除外額について

(一) 弁論の全趣旨によれば、破産会社は、本件簿外預金の利息として一〇五万〇一四九円(ただし、受取利息に係る所得税一五パーセント及び道府県民税五パーセントの各源泉徴収税金を差し引いた後の預金口座入金額であり、明細は、別表14の(1)及び(2)の各<1>欄記載のとおりである。)を受け取っているが、平成二年一二月期の確定申告において、右受取利息とこれに係る道府県民税の利子割の額六万五六二二円の合計一一一万五七七一円を申告しなかったことが認められる。

(二) 前記一7(一)(3)で認定したとおり、廣川昌は、平成二年八月一七日、二宮次長に指示して、広川口座から普通預金一二億円を出金させ、広川口座のある協和銀行上福岡支店において広川守名義で七億円及び五億円の二口の定期預金にさせているところ、右の定期預金は、広川口座のある銀行と同一の銀行において同一人名義で設定されたものであるから、その帰属が変更されたものと認めるべき特段の事情がない限りは、単に普通預金から定期預金に預金の種類を変えたものにすぎず、その帰属には変更を来さないものと考えるのが相当である。しかして、広川口座は、破産会社が支配・管理していたものであり、本件において、右定期預金の設定によりその預金の帰属が変更されたものと認めるべき特段の事情はないから、右の定期預金についても、破産会社が支配・管理していたと認めるのが相当である。

そして、弁論の全趣旨によれば、破産会社は、別表14の(3)に記載した日に同預金に係る受取利息六四〇万二三四六円(ただし、受取利息に係る所得税一五パーセント及び道府県民税五パーセントの各源泉徴収後の預金口座入金額であり、明細は別表14の(3)記載のとおりである。)を受け取っていること、しかし、破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、右受取利息及びこれに係る道府県民税の利子割の額四〇万〇一四五円の合計六八〇万二四九一円を申告しなかったことが認められる。

(三) 前記一7(一)(5)ないし(7)で認定したとおり、破産会社は、広川口座に入金した右自己株式の譲渡収入を原資として、役員及び従業員らに対し、年四パーセントの利率で計算した一年分の利息の額を天引きした上で資金を貸し付けているところ、弁論の全趣旨によれば、破産会社は、平成二年一二月期において、右貸付に係る受取利息として、別表14の(4)記載のとおり合計一七七八万一六九三円を受け取っていること、しかし、破産会社は、平成二年一二月期の申告において、これを申告しなかったことが認められる。

(四) 以上によれば、右各受取利息の合計額二五六九万九九五五円は、受取利息除外額として、平成二年一二月期の申告所得金額に加算されるべきである。

4  雑費否認額について

(一) 破産会社は、平成元年一二月期において損金の額に算入したリースサービスに対する同期の業務委託補助金五三九万三〇〇〇円を、平成二年一二月期においても雑費として損金の額に算入していたことは、当事者間に争いがない。

(二) 他方、弁論の全趣旨によれば、破産会社は、前記一7(一)(5)ないし(7)で認定した簿外資金による貸付けに当たり、別表17記載のとおり、振込手数料等として一万九一九〇円を支払っていること、しかし、破産会社は、平成二年一二月期の申告において、右金額を損金の額に計上していなかったことが認められる。

(三) したがって、右(一)記載の雑費額から右(二)記載の雑費額を控除した金額五三七万三八一〇円は、雑費否認額として、平成二年一二月期の申告所得金額に加算されるべきである。

5  新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額について

前記三1で認定したとおり、破産会社は、本件土地を取得する際、売主に簿外で七〇〇万円を支払っているところ、平成一〇年法律第二三号による改正前の租税特別措置法六二条の二第三項二号は、当該土地の取得の日から四年を経過する日までの期間を負債利子損金不算入期間としているから、平成元年九月一八日に取得された本件土地に関しては、平成二年一二月期のすべてが負債利子損金不算入期間に含まれる。そして、同条に基づいて、右七〇〇万円に係る新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額を計算すると、損金不算入額は、別表18記載のとおり、四二万円となる。

したがって、右四二万円は、新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入額として、平成二年一二月期の申告所得金額に加算されるべきである。

6  前事業年度における貸倒引当金の益金算入額

法人税法五二条二項により、前事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入された貸倒引当金勘定の金額は、翌事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入されるので、平成元年一二月期において損金として認容された五〇〇六円は、前事業年度における貸倒引当金の益金算入額として、平成二年一二月期の申告所得金額に加算されるべきである。

7  事業税認定損の額について

平成元年一二月期更正処分の結果、別表21記載のとおり、平成二年一二月期に納付すべき事業税額が四七万八二〇〇円増加するので、右金額は、事業税認定損の額として、破産会社の同期の申告所得金額から減算されるべきである。

8  貸倒引当金繰入限度超過額過大計上額について

(一) 弁論の全趣旨によれば、破産会社は、平成二年一二月期の確定申告において、同期の貸倒引当金として、一億七〇〇〇万円を損金経理により繰り入れたが、右繰入額のうちに限度超過額が三三三万六七九九円あるとして、同超過額を益金の額に算入して申告していたこと、しかし、破産会社は、右繰入限度額計算上、貸金の額に加えるべき次の(1)及び(2)記載の金額を加えておらず、他方、貸金の額に加えるべきではない次の(3)記載の金額を加えて計算していたことが認められる。

(1) 破産会社が社員持株会に対して有していた簿外の立替金七三万五五〇〇円

(2) 前記一7(一)(5)ないし(7)記載の破産会社の簿外の貸付金の平成二年一二月期末残高二四億〇六一九万九三九九円

(3) 前記第二の二(本件各更正処分の根拠等)5(算定根拠の詳細)(二)(1)記載の架空売上げに係る期末売掛金(ただし、架空売上げに係る消費税一一七万円を含む。)四〇一七万円(この金額については、当事者間に争いがない。)

(二) そこで、破産会社の計算した貸金の額に右(一)の(1)及び(2)記載の金額を加え、右(一)(3)記載の金額を差し引いた上で、平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法五二条一項及び平成一〇年政令第一〇五号による改正前の同法施行令九七条に基づいて貸倒引当金の繰入限度額等を計算し直す必要があるところ、これを計算すると、別表22記載のとおり繰入限度額は一億八五四〇万七九七九円となり、破産会社の繰入額一億七〇〇〇万円を超えることになる。

(三) したがって、破産会社の申告に係る前記(一)記載の限度超過額三三三万六七九九円については、その全額が平成二年一二月期の申告所得金額から減算されるべきである。

9  その余の加算・減算項目について

前記1ないし8記載の加算・減算項目を除く平成二年一二月期の加算・減算項目、すなわち、<1>交際費等損金不算入額七二一万二八〇六円、<2>支払保険料過大計上額一〇〇八万五〇三〇円、<3>売上原価過大計上額一億一八八三万七五五九円(以上加算項目)、<4>売上金額過大計上額一億二二九五万円、<5>新規取得土地等に係る負債の利子の損金認容額二三一八万八二九六円(以上減算項目)については、その基礎となる事実について、当事者間に争いがないから、右<1>ないし<3>の各金額が平成二年一二月期の申告所得金額に加算され、右<4>及び<5>の金額が同期の申告所得金額から減算されるべきである。

10  平成二年一二月期更正処分の適否について

破産会社の平成二年一二月期の申告所得金額が二五億八〇四七万五〇七八円であることは、当事者間に争いがないところ、前記1ないし9記載のとおり、加算・減算を行うと、破産会社の同期の所得金額は五八億四五〇九万三九九一円となる。

したがって、右金額の範囲内である五八億四五〇二万六三六一円を破産会社の所得金額とする平成二年一二月期更正処分は適法というべきである。

11  平成二年一二月期加算税賦課決定の適否について

平成二年一二月期更正処分に基づき納付すべき税額は、別表25記載のとおり、一二億九九〇〇万二九〇〇円となるところ、同期においては、別表27記載のとおり、過少対象増加税額の計算の基礎とすべき所得金額の増加はないから、右納付すべき税額のすべてが重加対象増加税額となる。

そこで、通則法六八条一項により、右納付すべき税額に一〇〇分の三五を乗じて賦課すべき重加算税額を計算すると、その税額は四億五四六五万円となるところ、平成二年一二月期加算税賦課決定は、過少申告加算税額を五二万二〇〇〇円とし、重加算税額を四億五二八一万九五〇〇円として加算税を賦課しているものである。

しかして、前示のとおり、更正処分に基づき納付すべき税額中に重課対象増加税額と過少対象増加税額があるものとして重加算税及び過少申告加算税を課した加算税賦課決定の適否が訴訟において争われている場合には、その賦課された重加算税額及び過少申告加算税額の総額が、当該更正処分に係る加算税として本来課されるべき税額を超えているか否かを審理し、右総額が本来課されるべき加算税の税額を超えている場合には、その超える税額部分を違法として取り消すのが相当であるところ、平成二年一二月期加算税賦課決定は、過少申告加算税額と重加算税額を併せて合計四億五三三四万一五〇〇円の加算税を賦課したものであり、その税額は、平成二年一二月期更正処分に係る加算税賦課決定において本来賦課すべき加算税の税額四億五四六五万円の範囲内であるから、平成二年一二月期加算税賦課決定は適法である。

五  本件青色申告承認取消処分の適否について

前記四で認定、説示したところによれば、本件有価証券売却益等に関し、破産会社が平成二年一二月期に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載した事実があったことは明らかであり、破産会社につき法人税法一二七条一項三号所定の青色申告の承認の取消事由が認められるから、本件青色申告承認取消処分は適法というべきである。

第四結論

以上によれば、本件各課税処分及び本件青色申告承認取消処分の取消しを求める原告の本件請求は、平成元年一二月期加算税賦課決定のうち税額一六万七〇〇〇円を超える部分の取消しを求める限度で理由があるから、その限度でこれを認容し、その余の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条、六四条ただし書を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 青栁馨 裁判官増田稔、同篠田賢治は、いずれも転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 青栁馨)

別紙一 青色申告承認取消処分の経緯

<省略>

別紙二 課税処分の経緯

事業年度 昭和六三年一月一日から昭和六三年一二月二〇日まで

<省略>

別紙三 課税処分の経緯

事業年度 昭和六三年一二月二一日から平成元年一二月二〇日まで

<省略>

別紙四 課税処分の経緯

事業年度 平成元年一二月二一日より平成元年一二月二〇日まで

<省略>

別表1 本件簿外預金の名義等一覧表(昭和63年12月期)

<省略>

別表2 補助金認容額(昭和63年12月期)

<省略>

別表3 雑収入否認額(昭和63年12月期)

<省略>

別表4の(1) 交際費等損金不算入額(平成元年12月期)

<省略>

別表4の(2) 交際費等損金不算入額(平成元年12月期)

<省略>

別表4の(3) 交際費等損金不算入額(平成元年12月期)

<省略>

別表5 支払保険料過大計上額(平成元年12月期)

<省略>

別表6 新規取得土地等の負債利子の損金不算入額(平成元年12月期)

<省略>

別表7の(1) 受取利息除外額(平成元年12月期)

あさひ銀行上福岡東口支店

<省略>

別表7の(2) 受取利息除外額(平成元年12月期)

富士銀行上福岡支店

<省略>

別表8 事業税認定損の額(平成元年12月期)

<省略>

別表9 貸倒引当金繰入超過額の過大計上額(平成元年12月期)

<省略>

別表10 有価証券売却益除外額(平成2年12月期)

<省略>

別表11 受取配当の金額(平成2年12月期)

<省略>

別表12の(1) 交際費等損金不算入額(平成2年12月期)

<省略>

別表12の(2) 交際費等損金不算入額(平成2年12月期)

<省略>

別表12の(3) 交際費等損金不算入額(平成2年12月期)

<省略>

別表12の(4) 交際費等損金不算入額(平成2年12月期)

<省略>

別表13 支払保険料過大計上額(平成2年12月期)

<省略>

別表14の(1) 受取利息除外額(平成2年12月期)

あさひ銀行上福岡東口支店

<省略>

別表14の(2) 受取利息除外額(平成2年12月期)

富士銀行上福岡支店

<省略>

別表14の(3) 受取利息除外額(平成2年12月期)

あさひ銀行上福岡東口支店

<省略>

別表14の(4) 受取利息除外額(平成2年12月期)

簿外貸付金受取利息

<省略>

別表15の(1) 売上原価過大計上額(平成2年12月期)

架空売上に係る過大売上原価

<省略>

別表15の(2) 売上原価過大計上額(平成2年12月期)

水増売上に係る架空仕入

<省略>

別表16の(1) 売上原価過大評価額(平成2年12月期)

材料

<省略>

別表16の(2) 売上原価過大計上額(平成2年12月期)

仕掛品

<省略>

別表16の(3)売上原価過大計上額(平成2年12月期)

製品

<省略>

別表17 雑費否認額に係る支払手数料認容分(平成2年12月期)

<省略>

別表18 新規取得土地等の負債利子の損金不算入額(平成2年12月期)

<省略>

別表19 日産機材に対する売上過大計上額(平成2年12月期)

<省略>

別表20の(1) 新規取得土地等の負債利子の損金不算入額認容額

(平成2年12月期)

<省略>

別表20の(2)

<省略>

別表21 事業税認定損の額(平成2年12月期)

<省略>

別表22 貸倒引当金繰入限度超過額認容額(平成2年12月期)

<省略>

別表23 所得金額に対する法人税額の計算(昭和63年12月期)

<省略>

別表24 所得金額に対する法人税額の計算(平成元年12月期)

<省略>

別表25 所得金額に対する法人税額の計算(平成2年12月期)

<省略>

別表26 更正後の所得金額の明細(加算税の対象所得金額内訳)

<省略>

別表27 更正後の所得金額の明細(加算税の対象所得金額内訳)

<省略>

別表28 加算税計算表(昭和63年12月期)

<省略>

別表29 加算税計算表(平成元年12月期)

<省略>

別表30 加算税計算表(平成元年12月期)

<省略>

別表31 破産会社における役員等持株推移表

<省略>

別表32 株主一覧表(日産機材(株))

<省略>

別表33 株主一覧表(リースサービス(株))

<省略>

別表34

<省略>

<省略>

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